「若いときに,2~3種類の異なるプログラミング・システムを学ぶことを勧めたい」。先ごろ来日したアラン・ケイ氏に,「IT Proの主な読者である,日本の若きシステムズ・エンジニアやプログラマたちにメッセージをお願いしたい」と頼んだところ,冒頭のコメントが返ってきた。

 「まったく違った特徴を持つプログラミング・システムを勉強することで視野が広がる。プログラミングとは何か,というセンスが身に付く。これが将来,とても役立つはずだ」(ケイ氏)

 ケイ氏は,「一つのランゲージだけ覚え,それだけで仕事をしていてはダメだ」ともコメントした。「プログラミング・システム」と「ランゲージ」を同氏は明確に区別していた。様々なプログラミング手法とその裏側にある仕組みを学ぶことで,コンピュータそのものが分かってくる。これに対し,特定の言語だけを覚えて,ひたすらコーディングするばかりでは真の成長がない,と言いたかったのであろう。

 アラン・ケイ氏は,グローバル情報社会研究所の藤枝純教社長が主催したフォーラムに出席し,3時間近くの間,スピーチやディスカッションをした。その中でケイ氏は,「本当のコンピュータ革命はまだ起こっていない。我々はコンピュータの持っている可能性を十分に生かしていない」と語った。

 フォーラムで語られた話題は,ITの将来展望,同氏が在籍したゼロックスのパロアルト研究所(PARC)が数々の発明を生んだ理由,子供とコンピュータ教育,日本のIT産業への期待などなど,多岐にわたる。IT Proでは本日から数回に分けて,アラン・ケイ氏の発言や対談内容を紹介していく(第1回の記事へ)。

 このフォーラムにおいて,プログラミング・システムの話題も出た。ケイ氏はSqueakと呼ぶオープンソースのプロジェクトについて説明した。これに関連したオブジェクト指向言語を巡るやりとりでは,「Javaより.NETのほうがいい」という発言が出た。「安定したプラットフォームを求めた結果生まれた.NETは,よく見るとSmalltalk[用語解説]に似ている。Javaよりレベルが高い」(ケイ氏)

(谷島 宣之=ビズテック局編集委員)