「米国政府,企業,消費者は個人情報の盗難について以前より注意を払うようになっている。しかし,個人情報の悪用を阻止するには,銀行などの金融サービス機関が積極的な対策を講じるべきだ」。米Gartnerが米国時間9月17日,個人情報の盗難について調査した結果を発表した。

 連邦取引委員会(FTC)は,個人情報の取り扱いに関して,消費者に注意を促すことが必要だという。またFTCでは,金融サービス分野の規制当局がより厳しい審査を行い,不正行為を厳重に罰することを勧めている。

 しかしGartner社は,これらの取り組みだけでは不十分だと考えており,身元を偽った犯罪者に融資やサービスを提供するケースがあるクレジット・カード会社,携帯電話のサービス・プロバイダ,銀行や小売業者などが,犯罪防止の取り組みを強化することが重要だという。

 Gartner社副社長兼リサーチ・ディレクタのAvivah Litan氏は,「金融サービスや無線サービスを提供するプロバイダの多くは,申込者がいくつかの個人的な質問に答えただけで,すぐに信用してしまう。ローンやサービスを提供する前に,その個人情報が盗難されたものでないか,確認する必要がある」と指摘した。

 また同社は,これまで犯罪の多くが“個人情報の盗難”として処理されなかったことが,同犯罪を増長する結果になったとみる。「今後,銀行や金融サービス機関は,支払期限を180日間過ぎたローンについては,回収不能として処理するのではなく,個人情報の盗難として分類べきだ。個人情報の盗難の発生件数を把握することにつながり,より効果的な対策を講じる動機づけにもなる」(同氏)

 Gartner社の最近の調査によると,2003年6月までの12カ月間に個人情報の盗難に遭った米国の成人消費者は700万人だった。しかし,米国政府はそれまで,個人情報の盗難による犯罪を70万件しか報告しておらず,同社は「このような誤った犯罪の分類の仕方が,犯罪者の検挙率を大幅に下げていた」と説明した。

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