(2001.10.29,Tony Kontzer=InformationWeek

 米Napsterの有料サービスは準備が整いつつある。しかし,そのスタートは再び延期となった。先週,提携企業であるドイツのBertelsmann AGから新たに資金援助を受けたにもかかわらず,当初は夏の終わりを予定していたサービス開始は年内にずれ込み,さらに2002年初頭に延期した。Napster社CEOのKonrad Hilbers氏がロサンジェルスで開催中の「Webnoize 2001」で明らかにしたもの。

 今年のイベント参加者は300人を下回った。景気が良く,毎日新たな会社が誕生していた過去2年では,1000人以上がイベントに訪れたものだ。今年イベントに参加した人々は保留状態のNapsterサービスについて,Hilbers氏から詳細な情報を得ようと必死だった。

 しかしHilbers氏は,仮のサービス開始日以外はほとんど明らかにしなかった。同氏は「私への質問を終わりにしてくれるなら,新たなNapsterサービスの価格情報を提供してもいい」と冗談を飛ばした。

 Hilbers氏は,Napsterファイル交換コミュニティの設立者Shawn Fanning氏が最高技術責任者(CTO)に就任し,引き続きNapsterサービスの技術開発に従事することを明らかにした。また,Napster社がモバイル機器への対応に着目していることを認めたものの,現在はパソコンに焦点を置くと述べた。さらに重要な点として,Napsterサービスが企業間(BtoB)取引を含むという考えを否定した。

 Napster社は先週,同社の技術をBertelsmann社Ecommerce Groupのオンライン音楽サービス事業であるBeMusic社にライセンス供与している。BeMusic社のサービスは主にBertelsmann社の音楽事業部門BMGの「BMG Music Club」向けに利用される予定だ。Hilbers氏は基調講演の後,Napster社の技術をBertelsmann社の関連企業以外に売るつもりはないと強調した。「我が社はBtoB企業ではない」(Hilbers氏)。

 同氏はまた,Napster社があらゆる大手レコード会社とライセンシング契約に関して協議中であることを明らかにした。契約がまとまれば,Napster社は有料のオンライン音楽サービスにとって重要とされる要素を提供できるようになる,と同氏は説明する。詳細は明らかにしなかったが,Hilbers氏は著作権所有者に適切な報酬を支払いつつ大手レコード会社のコンテンツを配信する技術をNapster社が導入していると述べた。

 同時に,音楽業界はデジタル・サービスの確立において忍耐を覚悟するべきだと指摘した。「デジタル配信は新たな収入源となるが,150億ドルを売りあげる小売りチャネルに今すぐ取って代わることはない」(Hilbers氏)。

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