「Code Division Multiple Access(CDMA)方式に準拠した現行の第3世代(3G)技術を広帯域固定無線サービス向けに提供するのは,品質とコストの面で難がある」。広帯域無線接続における業界標準の策定を目的とした非営利団体BWIF(Broadband Wireless Internet Forum)が米国時間10月10日に,CDMA方式の3Gシステムに関する調査結果「BWIF-Bringing Broadband Wireless Access Indoors」を発表した。BWIFはVOFDMをベースの広帯域固定無線の標準化を行っている団体である。

 モバイル・アプリケーション向けに開発された現行の3Gシステムは,消費者がモバイル環境で満足できるサービス品質を提供している。しかし消費者は,ストリーミング・オーディオやビデオなど,高速データ通信を必要とするインターネット接続では,より高い水準を要求する。このため,DSL,ケーブル,光ファイバなど,既存の回線ベースのシステムを利用している消費者は,通信速度が劣るCDMA方式の固定無線環境に満足しないと予測される。

 またサービス・プロバイダにとって,3G固定無線システムの構築コストは高くつく。CDMA方式のサービスを提供する場合,より多くの基地局が必要になるからだ。例えばシカゴの都市部で,ベクトル直交周波数分割多重(VOFDM:Vector Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術を利用して広帯域固定無線サービスを提供する場合,15の基地局ですむ。一方CDMA方式の3Gシステムだと,同じ地域をカバーするために1208の基地局が必要になる。

 さらにVOFDM方式は指向性アンテナを使用するのに対して,CDMA方式の3Gシステムでは,全方向性アンテナを使用する。このため同程度のサービスを提供するために,約6倍のスペクトラムが必要になり,コスト増をまねく。

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