前回はRPA(Robotic Process Automation)で野良ロボットが生まれる原因を紹介した。今回はどのようにすれば野良ロボットの誕生を阻止できるのか、そのガバナンスについて解説する。
RPAでガバナンスが失われ野良ロボットが増殖する最大の原因は、管理責任者の不在である。導入して使い始めたが、管理を担う人や組織が無いために、その後の運用がいい加減になってしまうのだ。
意外と手間のかかるRPA管理
RPA導入を成功させるためには、全社のロボットを管理する役割を担う管理責任者が絶対に必要だ。管理責任者はロボットを作るためにRPA製品を選定し、導入した製品の機能更新があれば全社に適用しなければならない。導入しているパソコンやサーバーとのバージョンの整合性を確認する必要もある。
ロボットが利用する業務システムの機能更新にも注意しなければならない。対象の業務システムに変更があれば、ロボットにも変更が必要となる。業務システムの機能更新の内容やタイミングを知っておく必要もある。新しい環境下におけるロボットの動作を確認し、全社的に機能を更新するタイミングも見定めなければならない。
RPAはよくEUC(エンドユーザー・コンピューティング)と比較される。EUCとは業務部門のユーザーがパソコン上のアプリケーションを活用して、自分の業務を効率化するためにプログラムを組むものだ。RPAと同様に業務部門が主導するために、野良EUCが生まれるリスクがある。
ただ、RPAに必要な管理は、EUCのそれとは少し様相が異なる。EUCではExcelやAccessといったマイクロソフト製品が使われることが多い。したがって、マイクロソフト製品のバージョンアップには気を使う必要があるため、マイクロソフトがバージョンアップを発表すると、ユーザー企業はこれまで使ってきたEUCを再点検するのが一般的だ。
一方、RPA製品では「業界標準」と言えるような圧倒的に優位な製品はなく、今はまさに戦国時代だ。どの製品も皆、今後とも継続的に機能を改善していくはずだ。RPAベンダーが買収される事態も想定される。RPAを導入したのはよいが、その後の維持・管理に工数がかかることにもなりかねない。
ここまで読んできてお分かりになるだろう。ロボットの管理にはEUCと同等以上の工数がかかるのだ。そして、導入後のこれからが大変になる。RPA製品のバージョンアップに対応しなければならないだけでなく、ロボットが利用するアプリケーションのバージョンアップにも対応しなければならない。