私が働いていたGEヘルスケアは「ライフサイエンス業界あるいはバイオ医薬品業界」を対象とした製造業で、お客さまは理系・医系大学の研究者と製薬会社がほとんどだった。研究者には創薬開発を支援するバイオテクノロジー技術・試薬・分析機器を、製薬会社の工場にはバイオ医薬品精製技術・装置・原材料を提供しており、既存顧客からの売り上げが9割近くを占めていた。

 しかし、この業界は市場が大きく伸びているわけでなかった。既存顧客だけに頼っていたのでは、当然のことながらジリ貧になるという危機感に常にさらされていた。

新規顧客を獲得せよ

 したがって、15年以上前に営業責任者をしていた頃の私は、とにかく営業担当者に「新規顧客開拓がお前たちの仕事だ、既存顧客に会ったところで、大型装置は10年に一度しか売れないんだから、新規を探して売り上げを立てろ」とゲキを飛ばしていた。

 もちろん、狭い業界で簡単に新規顧客が見つかるわけでもなく、売り上げは相変わらず既存顧客からしか上がらない。「新規を獲得しないと給料を払わないぞ」くらいのことも言ったものだ。

 他の業界でも「新規顧客獲得は成長の原動力であり、生命線である」と言い切る経営者や営業責任者は多いと思う。

 しかし、現実には既存顧客への売り上げ依存度が高い。だからこそ、これまで生き残って来られたのだ。今の会社があるのは既存顧客のおかげなのだ。

 にもかかわらず、私を含め多くの人は「既存顧客だけに依存していたら先がない、新規顧客を獲らなければ未来はない」と躍起になる。

 いや、ゴールは間違っていないのだ。新規顧客の獲得は死活問題である。しかし、その方法論が間違っている

 自分たちで新規顧客を取りに行けば、とてつもない労力とプロモーション(宣伝)コスト、マーケティング(販売管理)コスト、つまりは顧客獲得コスト(CPA:Cost Per Acquisition)が天井知らずになる。既存顧客から得た利益を全て新規顧客獲得につぎ込んでも収まらないほどで、もはや何をしているのかわからなくなってくる。つまりゴールは正しいが、しっかりと手法を考えなくてはいけないのだ。

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