マーケティング部が持つべき知識としては「自社の製品知識」「競合知識」「一般市場知識」「自社の顧客知識」、そして「一般マーケティング理論」が挙げられます。ではこの中で最も有効なものは何か。言い換えるならば、「その2割さえ押さえれば、全体の8割がカバーできる」という、“パレートの法則”のような有効性を持つ知識は何かと問うならば、それは「顧客知識」だと筆者は考えます。
この顧客知識は、もう一歩具体化して「顧客の生態についての知識」ともいえます。言葉は悪いですが、これは例えば「南洋パタゴニア諸島のワタリオオキチョウの生態」と同じ構造の知識です。
顧客の生態とは、「顧客が自社の商品を、いつ、どんな動機で必要とするか(or 欲しくなるか)」「その購買を顧客内で発議するのは誰か、製品選定するのは誰か、決定するのは誰か」「社内のどの予算から捻出されるのか」などのことです。「顧客はどのようにモノを買うのか」――。これが分かれば、モノは売りやすくなります。
ちょっと良くない比喩かもしれませんが、販売を漁猟になぞらえて考えてみます。漁猟とは「漁場で自由に泳ぐ魚をつかまえること」であり、それは「市場で自由に振るまう顧客から成約を獲得する」という販売と共通性があります。
ある漁師に聞いたことですが、魚を獲るに当たり「漁法の知識」「漁の技術(腕前)」「魚の生態の知識」のうちもっとも重要なのが、魚の生態の知識だそうです。
釣りたい魚の生態、つまり特定の魚が、この季節、この時期、この天候、海水温、海流のときに、海中のどこにどのぐらい群れて泳いでいくのかを熟知してさえいれば、漁船が古くても、漁の技術が低くても、そこに行きさえすれば魚はたくさん獲れるということでした。