前回は、「ハードウエアは売るものが目に見えて性能のスペック表現も可能だ。ならば事例は必要ないかも?」という問題を提起しました。しかし現実には、製造業の企業も事例に高い関心を持ってるようで、筆者が経営する会社には、ソフトウエア業界だけでなく製造業からも事例制作の注文が届きます。
つまり「目に見える・説明しやすい・値段も分かりやすい」という製造業界でもやはり事例は必要なのです。今回はその理由を考察します。
「分かりやすい商品」ゆえのマイナス面
筆者は有料の事例セミナーで講師をすることがあります。過去に開催したセミナーの参加者で最も高い割合を占めたのはソフトウエア業の人でしたが、2番目に多かったのは予想に反して製造業の人でした。
筆者は休み時間を利用して、製造業の参加者に次のように聞いてみました。「今日はなぜセミナーに参加いただいたのでしょうか。製造業は商品が目に見えるし説明しやすいので、事例のような遠回りな販促は不要という考え方もあるのですが」。
その人からの返事は意外なものでした。「目に見えるものばかり売っているのでは先細りなので、いま会社でソリューション分野に力を入れています」――。
この回答から推測したのは、有形商材の「目に見える、説明しやすい、だから価格もおのずと決まる」という特徴は良い効果だけではないということです。単純化すると「効果や性能を説明しやすいものは、価格がはっきりしてくるので、価格競争に陥りやすい」という意味のようでした。