事例インタビューで取材をするときに、取材先となる顧客にどんな質問をどんな順番で聞いていくのがいいか悩んだことはありませんか。筆者の考えでは、起こった出来事を起こった順番に質問していく時系列の質問法が最強です。時系列の質問なら、聞かれたほうも思い出しやすく答えやすいからです。

 インタビューでは導入前の課題や、そのとき商品をどんな基準で選んだかなど「昔のこと」を取材相手から聞きだそうとします。しかしなにぶん昔のことなのでインタビュー相手がよく覚えておらず、記憶が曖昧なのが普通です。しかし時系列で順番に聞いていけば、薄れていた記憶も次第によみがえるものです。

隠しているのではない、忘れているだけ

 筆者は何度か、「事例取材のとき、お客様が平凡な答えしかしてくれません。どうすれば本音を引き出せるでしょうか」と質問されたことがあります。この「本音を引き出す」という発想の背後には、「顧客は本音を隠そうとしている」という前提があります。

 筆者はその前提は間違っていると思います。

 商談やシビアな条件交渉なら、なるほど顧客は営業担当者に本音を悟られまいとポーカーフェースを貫くでしょう。しかし事例取材の場で、そこまで手間ひまをかけて頑張る人はまずいません。ざっくばらんとまではいかないにせよ、多くの場合、顧客は質問に対し普通にオープンに答えてくれます。

 ではなぜ、顧客は平凡な回答しか返さないのでしょう。ほとんどの場合、昔のことなので忘れているからです。

 そうはいっても、インタビューを受けた以上、質問には答えないといけません。そこでその場で回答を考えますが、たいていそれはテンプレートどおりの無難で面白くない内容になってしまいます。

 インタビューで面白いのは顧客の感想ではなく、現実にあったエピソードの方です。エピソードを知るには事実情報、すなわち誰が(WHO)、どこで(WHERE)、何を(WHAT)などのいわゆる「5W1H」を丹念に集める必要があります。

 この事実情報を思い出させるには、時系列に順々に質問するのが最良といえます。「思い出させたいなら時系列」と覚えてください。

「忘れられていて当たり前」を前提に

 商品を販促する側である読者の皆様にとって、自社商品のことは少なくとも勤務時間中は極めて重要な関心事であり、マインドシェアの高い項目でしょう。しかし商品を買った側(読者の顧客)にとって、あなたの会社の商品は「いろいろ導入した商品の一つ」にすぎず、日常生活ではほぼ完全に忘れられています。

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