ビジネスの事例研究(CASE STUDY)には「過去の事例の分析」のほかに、「一般理論を、現実の企業や製品に当てはめてシミュレーションする」という意味もあります。ビジネススクールで教授が、「業界トップシェアの自動車会社からシェアを奪うにはどうすれば良いか。私と議論ができる人は手を挙げなさい」といって始めるような議論がそれです。

今回は、実際の商品を基に事例研究をシミュレーションしてみます。事例制作の一般理論を、現実の商品や技術に当てはめて販促を設計するわけです。
題材にするのは、10年に一度のIT技術革新であり、ブレーク寸前の新技術、ソフトウエア定義ネットワーク(Software Defined Network、略してSDN)です。では始めましょう。
大前提 SDNは「ナゾの商品」である。
SDNってそもそも何なのでしょう。読者のみなさんは御存知ですか?恐れず推測すると「知らない、何それ?」か、「何か流行ってるみたいだし、名前は聞いたことはあるけど、でも実は何なのかよく分かってないんだよね」といったところではないでしょうか。筆者は今でこそSDNについて「一応は理解できた」といえるレベルに達したものの、最初は技術内容がさっぱり分かりませんでした。
そのときはとりあえず「SDNとは」で検索しました。すると「1分解説、SDN!」といった趣旨の記事がヒットしました。
こういう記事が存在するということは、「いま流行のSDNについて知りたい」というニーズが世の中にあり、SDNが「ある程度、多くの人に関心を持たれていること」を示しています。これが「いまさら聞けない定番技術SDN」といったタイトルの記事が出るようになれば、それは「SDNがブレークした」ということです。
しかし、その記事には「正確な技術的解説」や「たとえ話」は書かれているものの、「SDNとは○○○である。以上!」といった「端的な説明」はなかったので、正直なところ「これでSDNが分かった!」という気分にはなれませんでした。そこで次は、言葉を分解して理解しようと試みました。「類人猿とは何か、それは人の類いの猿である、つまり遺伝的にヒトに近い猿なんだろうな」といった理解形式です。
例えばウイルス対策ソフト、生産管理システム、電子帳票システムなどは、名前を分解すれば「ウイルスの対策をするソフト」「生産を管理するシステム」「(紙の)帳票を電子化するシステム」のように、とりあえず理解できます。
しかしSDN、「ソフトウエア定義ネットワーク」を分解しても「ソフトウエアで定義するネットワーク」となり、やはり分かりません。私は「ソフトウエア定義って何それ?だってネットワークは物理的にケーブルがつながっていないと信号が行き来できないでしょ???」と思いました。
仕方が無いので、さらに検索していくつものドキュメントを読んでみました。その結果、「SDNなら一つの物理的ネットワーク上に、仮想ネットワークを二つでも三つでも設定できる」、「設定した仮想ネットワークの削除や変更も自由にできる」「設定や変更、削除はパソコンなどから簡単に操作できる(物理的なケーブルと格闘しなくてもよい)」ということが分かりました。