高ROE企業には、ユニークなビジネスモデルを確立しているところが多い。以下で紹介するUSENは店舗向け音楽配信、エスアールジータカミヤは建設現場の仮設足場レンタルで、高収益を上げてきた。

 ただしそうした状況は永遠に続くわけではない。ライバルの台頭、需要の飽和など課題が待ち受ける。高収益性を維持していくには「強い組織」作りが必要だ。そこで2社が注力するのが「ワークスタイル変革」。働き方を変えて生産性と顧客対応力の向上を図る。

[USEN]
強みは営業サポート全国網 事業を超えたつながり作る

 チャンネル数は500以上で24時間音楽を楽しめる。そんな音楽配信サービスを、店舗や家庭などに広く提供しているのがUSENだ。同社のROEは、2014年8月期で40.6%。財務体質を改善するために借入金を減らしたことから、ROEは前期に比べて2.7ポイントほど下げたものの、40%を維持している。音楽配信事業での圧倒的なシェアが高収益の源だ。

 かつては、無料ブロードバンド放送サービス「GyaO」など事業を広げていたが、リーマンショックの影響で業績が低迷。事業売却や財務体質改善を行い、本業の音楽配信サービスへの回帰を図ってきた。

 財務体質改善などが奏功しつつある2013年末、USENは飲食、小売、理美容、医療、オフィスの5分野に重点を置く戦略を掲げた。扱う商品も音楽配信サービスに必要な専用チューナーや音響機材だけでなく、ネットワーク、IPカメラ、iPadとクラウドによるPOSレジなどに広げている。音楽配信の枠を超え、顧客の業務効率化に役立つ商材を幅広く提供する方針を打ち出す。

●USENは複数ある顧客接点を情報でつなぎ顧客応対力を高めている
●USENは複数ある顧客接点を情報でつなぎ顧客応対力を高めている
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 オフィス向けには、仕事に集中しやすくしたりストレスを和らげたりする音楽配信サービス「Sound Design for OFFICE」のほか、クラウドやデータセンターのサービスも提供している。

 これらの製品・サービスは、全国に配置する数百人の営業担当者と、技術者750人が提供している。この人的インフラをさらに活用すべく、ここ数年、力を入れるのが、全国のワークスタイル変革だ。「事務処理や報告・連絡を効率化して、より多くのお客様と接点を持ちたい」(服部浩久常務執行役員経営企画室長)という思いから始まった。

 例えば、営業担当者が訪問先の商談で見積もりを出す場合、これまでは拠点にいる担当者に電話などで確認する手間がかかっていた。キャンペーンの実施期間中などは、社内システムで計算しなければ、正確な見積もりを出せなかったからだ。

 また2012年からは、コールセンターと営業担当者、技術者が、顧客からの問い合わせ情報を共有できるよう、CRM(顧客関係管理)システム「Dragon」を稼働させ、業務で利用している。ここでも課題があった。技術者は工事の実績を入力するためにわざわざ、拠点に戻らなくてはならない。

 「社員1人にとってはわずかな時間短縮でも、全社で大きな効果が得られると判断すれば、ITを積極的に導入し、仕事のやり方を見直してきた」と、服部常務執行役員は明かす。

 営業担当者の見積もりについては、2012年にiPadの導入で解消。見積もり計算ツールを開発し、訪問先で顧客に提示できるようにした。

 iPadにはこのほか、説明資料データや、一部の音楽番組を試聴できるアプリなどを搭載し、顧客への提案ツールとして活用している。

 また技術者向けには2015年、iPhoneからDragonにデータを入力できるアプリ「MobileDragon」を開発。技術者が客先で修理を終えると、その場で修理内容を入力できるようにした。

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