企業の収益性を示す指標のROEは、株主から調達するなどして得た自己資本で当期純利益を割った値。2015年6月1日現在、日経平均株価を構成する企業のROEは平均8.5%。それを上回る“高ROE企業”は、稼ぐ力が強いと見なせる。

 本誌の取材によると、稼ぐ力の強い企業は、「現場のデータを現場で使う」ことを徹底している。

[ドンキホーテホールディングス]
売り場作り権限、現場に委譲 データで機敏な品ぞろえ

 総合ディスカウントストアチェーン「ドン・キホーテ」などを展開しているドンキホーテホールディングス。2014年6月期の決算で、25期連続の増収増益。2015年6月期にさらに記録を伸ばす見込みだ。

 過去10年でROEは、10%以上の高水準をキープ。安定して稼ぐ力を発揮している。

 その源泉は、店舗や売り場などの責任者に権限を委譲し、現場主導で売り場を作っていく「個店主義」だ。売り場に並ぶ商品のうち、6割は本部が仕入れるが、残り4割の仕入れは、店長や、家電製品や日用雑貨品など各売り場を担当する責任者の裁量に任されている。

 現場の裁量によって仕入れた商品の販売実績は、店長や売り場責任者の人事評価にもつなげる。給与の半分が業績に連動し、売上高、粗利益、在庫回転率という3つの指標で評価。店長や売り場の責任者の「商売人」としての士気を高めることにつながっているのだ。

●オフィス街の一角にあるドン・キホーテの旗艦店、銀座本館は平日でも客足は絶えない
●オフィス街の一角にあるドン・キホーテの旗艦店、銀座本館は平日でも客足は絶えない
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他店を参考に“稼ぐ”売り場作り

 ただし業績連動型報酬という金銭的なインセンティブを与えて、自助努力に任せているわけではない。店長や売り場の責任者が、高い「商売人パフォーマンス」を発揮できるよう、情報提供を惜しまない。全国約300店舗のPOS(販売時点情報管理)システムからデータを吸い上げ、リアルタイムに現場にフィードバックしているのだ。

 店舗で見られるデータは、グラフなどを盛り込んだPDFファイル。売れ筋商品ランキングのほか、商品ジャンルや、店舗、支社といった観点で多角的に分析され、見たらすぐ対策を打てるものが多い。

 店長や売り場担当者はこれらのデータを生かし、稼ぐ売り場を作る。

 旗艦店の1つである、ドン・キホーテ銀座本館の廣田進店長も接客などの合間に、店舗のカウンターなどに設置したパソコンで、分析データをチェックしている。「他店舗の売れ筋が参考になる」と話す。

●店舗内のパソコンで日々得る販売実績を売り場作りに生かす
●店舗内のパソコンで日々得る販売実績を売り場作りに生かす
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 データから売れ筋と分かれば、「他店で売れているこの商品、うちでも扱えない?」「うちでも扱っているこの商品が他店では好調だ。当店でももっと前面に押し出していこう」などと、各売り場の責任者7人と連携しながら改善に着手。データを見た直後から陳列を変え始めることも少なくない。

 商品を仕入れてからは、その売れ行きをデータで追っていく。責任者1人ひとりが、担当売り場の売上高、粗利益、在庫回転率といった指標をシステムの画面でチェックできるようにしている。

 なかでも売り場責任者が特に目を光らせているのが在庫回転率だ。かつてブランド品を中心に「仕入れたものの、なかなか売れない」という商品が増えた時期があった。その回避のため、在庫回転率を人事評価にも織り込んで、売れる商品を仕入れる責任者が、高く評価されるようにしているからだ。

 また免税カウンターでの手続き状況を基に、外国人顧客の購買状況を把握できるようにしている。中国をはじめとする外国人観光客からの全売上高のうち、8割は銀座本館を含む売り上げトップ20店から得られていることが分かった。

 そこで外国人観光客が買い物を楽しめるよう対策を着々と進めている。全店を免税店にしているほか、売り上げトップ20店には、中国語など外国語が堪能な店員を配置し、接客に当たっている。

 ただし、深夜に必ずしも外国語ができる店員がいるとは限らない。売り上げトップ20店以外に、外国人観光客が来店する可能性もある。

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