前回「ソーシャルメディアを使ったマーケティング」は、ビジネスパーソンにとってそれ単体では何のスキルにもならなくなっている、と述べた(参考記事:3年で激変した企業の最重視スキル、「デジタルマーケティング」だけでは採用してもらえない?)。
特に米国では、マーケターのスキルとして、ソーシャルメディアが重要視されなくなっている。それだけではなく、マーケティング戦略におけるソーシャルメディアの位置付けまでが変わってきている。
これまでソーシャルメディアは「消費者とのエンゲージメントを高める」ために、無くてはならないものとして考えられてきた。それが今や「コストは掛かるが、特に何のメリットももたらしていない」存在になりつつあるようだ。
そうした、企業からのソーシャルメディアに対する懐疑的な視線をうかがい知れる調査結果が、2016年に入って相次いで公開された。一つは米TrackMaven社によるもの。そしてもう一つは米デロイト、デューク大、全米広告主協会が共同で年に2回実施している「The CMO Survey」だ。
TrackMaven社の調査は、少なくとも2015年に入って以降、企業(ブランド)がソーシャルメディア上に発信する投稿は増加しているが、そこから得られる「エンゲージメント」は低下していく一方だと指摘した。約2万3000の企業を対象に調査した結果では、1投稿に対する反応はフォロワー1000人当たりで2.19回と非常に低いものだった。
The CMO Surveyもこれと同様の傾向を指摘している。最新のレポートによると、今後5年で、ソーシャルメディア関連の施策に企業などが計上する予算は、マーケティング予算全体の約20%を占めるという。2009年時点で約5%、2015年時点で約10%だったことを考えると、この後に想定される伸びが非常に大きいといえる。