2017年秋頃から本コラムで、スマートスピーカーの普及によって変化する消費者行動について何回か取り上げてきた。この変化に対応して、企業のマーケティング活動も変わらなくてはいけない。スマートスピーカーが消費者の生活空間に溶け込んだことが、日常生活に影響を及ぼし始めている。

 「スマートスピーカーの普及によって、人々は音楽を聴く時間が長くなった」――。英BPI(British Phonographic Industry = 英国レコード産業協会)と英ERA(Entertainment Retailers Association = エンターテインメント小売業協会)は、2018年3月にこんな見解を発表した。その上で、「ダウンロードやストリーミングによる音楽配信サービスと、ラジオ広告市場が成長を見せる」と予測した。

 これは音楽などのコンテンツに限った話ではない。コマース向けソフトウェアプロバイダの米Narvar社は「米国の消費者の購買行動は、キーボードや画面のタップなどといった入力動作から、音声へと確実にシフトしつつある」というレポートを2018年4月に発表した(編集部注:レポートの全文は個人情報の登録後に閲覧可能)。スマートスピーカーを所有している人口が増えただけではなく、スマートスピーカーを使って買い物をした経験がある消費者が「半年前に比べて4割以上増加した 」という。

 しかし、企業・店舗側は消費者の変化に追いついていない。 Narvar社のレポートは、「消費者が購買行動で“声”を使うシーンは『商品を調べる(51%)』、『買い物リストに追加する(36%)』、『配送状況を確認する(30%)』、『商品を購入する(22%)』と幅広いが、ECサイトで音声操作が可能なバーチャルアシスタントを用意している企業・店舗は全体の24%」と指摘している。

 実店舗においてはもっと少なく、「Amazon EchoやGoogle Homeなどのデバイスを用意しているところは全体の8%」という。とすると、2018年3月に日本の大型商業施設で始まった来店客向けの店舗案内にAmazon Echoを活用する取り組みは、世界的に先進的なものといえるだろう。

 スマートスピーカーだけではなく、「チャットボット(「チャット」と「ボット」を組み合わせた造語で、人工知能などを活用し、テキストや音声を用いて会話を自動化させるプログラムのこと)」や「AR(Augmented Reality = 拡張現実:実在する風景に仮想の視覚情報を重ねて表示させ、目の前にある世界を仮想的に拡張する技術)」などに置き換えても、企業による消費者の変化への対応は、それほど進んでいないように見える。

 IoT(モノのインターネット)の広がりやアプリケーションの多様化で 、消費者の周りには相次いで新しい技術が現れ、手軽にサービスを扱えるようになっている。新しい技術やサービスは、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた世代、「ジェネレーションY」とも呼ばれる)やジェネレーションZ(1995年から2010年ころまでに生まれた世代)を中心に使われるといわれてきた。

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