欧米の販売が好調で、2015年3月期も増収増益を見込む日産自動車。その屋台骨を支える拠点がベトナム・ハノイ市にある。
それは日産テクノベトナム社。クルマの設計、開発を担う日産テクノ(神奈川県厚木市)の子会社として2001年に設立された。労務費が日本の4分の1というコストメリットに加え、平均年齢28歳の社員が着々と技術力を身に付けた。「納期順守率95%、手戻り率1%以内という高いコミットメントを掲げ、実現している。今では設計業務の約4割を、ベトナムに移管している」と日産テクノの村田恵一社長は話す。
実は日産テクノベトナムで働くエンジニアの多くは、自分でクルマを運転しない。国際自動車工業連合会の2012年のデータでは、ベトナムでの車の普及率は、人口1000人当たりわずか20台。今後は二輪車から四輪車へのシフトが進むとみられるが、税金が高いことなどもあり一般市民にはなかなか手が届きそうにない。ましてや日産テクノベトナムが創業した時期には、クルマに乗ったことすらない社員がほとんどだった。どうやってクルマのエンジニアに育てたのか。そこに同社の技能伝承のすごさがある。
日産テクノベトナムの設立とほぼ同時期に、日産自動車では「V-3P(ブイサンピー)」と呼ばれる開発プロセス刷新プロジェクトが動き始めていた。デザイン、設計、生産技術などの工程を同時並行で進め、開発期間を大幅に短縮することを狙ったもの。実際に新車の開発期間を半減するなど多くの成果を生み出した。