そこで目を向けたいのが、米国流のソフトウエア契約だ。米国でも過去、現在の日本と同じような問題に直面し、それを乗り越えた経緯がある。現行の契約形態を大きく変更するにはハードルがあるかもしれないが、必ずヒントを得られるはずだ。
米国では、ユーザー企業が主体となって内製でソフトウエア開発を進めるのが主流である。自社だけでは人が足りずに要員を調達する場合は、外部からタイムアンドマテリアルと呼ぶ契約で人を集め、プロジェクトを編成する場合が多い(タイムアンドマテリアル契約については後述する)。その一方で、委託開発における工夫もある。
米国防総省では反復型開発を義務化
米国でも委託開発の契約で仕様変更などが問題となることはある。だが、ソフトウエア開発の考え方を大きく変えていった点で、日本とは異なる。
図5を見てほしい。これは米国防総省の調達条件の変化である。1980年代初頭にはウォーターフォールモデルが委託先への調達条件となっていた。しかし開発途中での仕様変更や、要件と完成物の乖離などで委託先とトラブルとなることもあった。
そこで1990年代半ばには、調達条件を反復型推奨とし、ウォーターフォールモデルのように前工程を完璧に完成させることには限界があるという考えに変わっていった。さらに2000年代前半には、反復型推奨から反復型を義務化したのである。委託開発でも柔軟にスコープ変更に対応可能な開発プロセスを取り入れたわけだ。