通信事業者が提供するWANサービスやIP電話は、通信料金の値下がりが続き、ユーザー企業も通信支出を削減する傾向にある。事業者にとっては市場の縮小傾向が続いている。
サービスは成熟しつつあり、ユーザー企業にとっては提案段階で事業者間の料金競争を促しやすい。また、ユーザー企業が拠点間接続に利用する回線を見直す動きが進行しているようだ。高機能・高品質なVPN回線をインターネットVPN接続、さらに単なるインターネット接続に切り替えるような動きだ。IP電話も基本的にはコモディティー(日用品)サービスになり、通信料金など費用面以外での差異化が難しくなりつつある。
WANサービス
インターネットVPNも利用率低下
2015年の調査結果でも、企業のWANサービスに対する支出額が減る傾向が続いた。1社平均の支出額は2014年の1832万円から10.8%低下した1635万円。支出額の調査を開始した2013年が同1932万円だったので、調査開始時から2回続けて、ユーザー企業がWANへの支出を削減する傾向が続いている。
接続拠点数は、2014年の67.5拠点から61.2拠点へと9.3%減った。接続拠点が少なくなっている傾向も、WANへの支出額が減る要因の一つになっているようだ。
主要なWANサービスの利用率の推移(複数回答)では、2011年にサービス提供が始まったレイヤー2(L2)/レイヤー3(L3)混合型サービスの伸びが続いている(図12)。L2/L3混合型の利用率は2014年から0.6ポイント伸びて29.8%となり、6.2ポイント減の22.5%まで下がった広域イーサネットサービスを逆転した。
NTTコミュニケーションズ(NTTコム)やKDDIは基本的に、従来型のIP-VPNや広域イーサネットからL2/L3混合型サービスへとユーザー企業が乗り換えることを推奨し、サービス移行を進めようとしている。提供サービスをL2/L3混合型に寄せることで、ネットワーク設備の運用を効率化する狙いだ。料金面で有利な条件提示を受けて、L2/L3混合型へのマイグレーションを進めたユーザー企業も少なくない。
こうした事業者の「販売政策」もあり、IP-VPNも2013年から利用率が低下する傾向が顕著になっている。広域イーサネットに続き、IP-VPNもL2/L3混合型を下回る可能性が見えてきた。