IT-CMF(IT Capability Maturity Framework:IT能力成熟度フレームワーク)は、ビジネスに貢献するITという視点に重きを置き、ITの成熟度を測定・改善するためのフレームワークである。企業におけるIT活用の度合いを、35の項目に関して5段階の成熟度で評価する。
IT-CMFはもともと、米インテルのIT部門によって開発されたフレームワークであり、それを非営利のテクノロジー研究・教育機関「IVI(Innovation Value Institute)」が整理・拡張した。IVIは、インテルとアイルランド国立大学メイヌース校が共同設立し、現在では、マイクロソフト、SAP、NTTデータ、シスコシステムズ、富士通、ボストン・コンサルティング・グループ、BNYメロン、ブリティッシュ・ペトロリアム、チューリッヒ保険など、90以上の企業・組織が参画している。
「itSMF Japanコンファレンス」(2015年11月30日~12月1日)の講師として来日したBNYメロン(The Bank of New York Mellon)のパフォーマンス&バリューマネジメントのリーダー、マット・クレイグ氏(写真)に、IT-CMFの活用方法と効果について聞いた。
BNYメロンの概要とそこでの役割を教えてほしい。
BNYメロンは1784年に設立された金融サービス会社であり、35カ国100以上の市場で機関投資家や個人投資家が世界中の金融市場で行う資産の取引、運用、管理のサービスを提供している。既に230年以上の歴史を持っており、その間、イノベーションを続けて様々な変化を乗り越えてきた。
私はツールやフレームワークを駆使して、内部のベンチマークを作ったり、外部のベンチマークを使ったりして、IT全体のパフォーマンスを見て改善していくことが役割である。例えば、ITIL(IT Infrastructure Library)やIT-CMFを使って、事業部門とも連携しながらITの運用や活用を向上させていく。それによって会社に対して、さらにはお客様に対して、より高い価値を提供できるようにする。
BNYメロンは、社員が5万700人いるが、うち1万3000人がIT部門に所属している。私の部署は、CIO直属であり、CIOオフィス(注:経営戦略と情報化戦略を同期させるために、システム開発・運用部門やITベンダー、事業部門と連携しながら、経営改革や業務改革を推進する部署)のような組織である。
IT-CMFを採用したのはどういう経緯ですか。
BNYメロンは以前から、ITILやCMMI(Capability Maturity Model Integration)など、いくつかのフレームワークを導入し、生かしてきたが、ビジネスとITとの関係性を全体的に見られるフレームワークを探していた。2012年にスレッシュ・クマールがCIOに就任し、目を付けたのがIT-CMFだった。私はクマールCIOからの指示でIT-CMFについて調べ始めた
私と3人の担当者が2012年7月に、IVIのトレーニングコースに入り、認証を取得した。IT-CMFの有効性を実感したので、クマールCIOに採用を進言した。さらに、会社としてIVIに参加することも決まった。