写真1●IBM Researchなどのアライアンスが7nmプロセスで試作したチップ
写真1●IBM Researchなどのアライアンスが7nmプロセスで試作したチップ
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 2015年7月9日、IBM Researchを中心とするアライアンスは、業界初となる線幅7nmでの半導体製造プロセスでチップを試作したと公表した(写真1)。SiGeチャネル材料を使ったもので、2~3年後の量産化を目指しているとみられる。

 米IBMは2014年までにx86サーバー事業の売却を完了、さらに2015年7月に半導体製造部門の譲渡も終えた。その一方で、最先端の半導体製造プロセス技術には、引き続き投資を続けている。こうした一見複雑なIBMの事業再編には、どのような意図が隠れているのか。これらの事業再編における統括責任者で、IBMのサーバー、ストレージ、ミドルウエアの事業を率いるシニア・バイス・プレジデントのトム・ロザミリア氏に聞いた(写真2)。

IBMはここ2年、ハードウエア事業について大きな決断をいくつか下している。x86サーバー事業の売却や、半導体製造部門の売却などだ。どのような考えに基づき、手放すもの、残すものを決めたのか。

写真2●IBM システムズ シニア・バイス・プレジデントのトム・ロザミリア氏
写真2●IBM システムズ シニア・バイス・プレジデントのトム・ロザミリア氏
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 x86サーバーや半導体、いずれも私が担当したものだ。この事業再編には、共通するテーマがあった。利益率が極めて低い事業と、スケールしない事業、つまりIBMとして規模の強みが出せない事業は、IBMの社内に残さないというものだ。

 x86サーバーを購入する顧客は、サーバー自体に高い付加価値を求めず、迅速な受発注の対応や納期の早さを求めている。イノベーターではなくディストリビューターが利益を得るモデルだ。

 これに対し、IBM社内に残したメインフレームやPOWERサーバー、フラッシュストレージやSDS(software defined storage)といったストレージは、今もIBMがイノベーションを推進し、差異化した価値を提供できると判断し、社内に残した。

半導体の事業再編はどうか。

 半導体は、x86サーバーとはややストーリーが異なる。

 IBMは今後も、半導体回路の設計技術はもちろん、回路の微細化技術、シリコンを超える次世代テクノロジーへの投資を継続する。先頃発表した7nmの製造プロセスに加え、シリコンフォトニクス、グラフェンなどの研究を通じ、科学サイドのブレークスルーを目指す。

 ただ、チップの製造まで我々が手掛ける必要はない。製造においては、専業の受託企業の方が規模の効果を出しやすい、と判断した。今後10年間は、製造部門を譲渡した米グローバルファウンドリーにチップの製造を委託する。

IBMは、他社に先駆けて半導体チップに銅(Cu)配線などを導入するなど、歴史的に半導体製造技術の進歩を牽引していた。半導体製造部門を切り離した後、プロセス技術の研究開発をどうやってビジネス上の優位に結びつけるのか。

 IBMは、半導体製造プロセスの研究開発では他社とアライアンスを組み、素材レベルでの技術革新を促している。我々が差異化するのはその先だ。グローバルファウンドリーズにチップの要求を提示し、自社の好みに合ったレシピを製造プロセスに適用することで、優位性が生まれる。素材自体が同じでも、レシピが異なれば、独自の料理を作ることができる。

7nmプロセスをチップの量産に適用するのはいつか。

 それはまだ言えない。

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