無線LAN機器に関する相互接続の認定プログラムの策定や推進などの活動を進めている業界団体、Wi-Fi Allianceは2018年6月、最新のセキュリティ規格であるWPA3を発表した。この規格はどのような特徴を持ち、いつ頃から本格的な普及が始まりそうか。マーケティング担当バイスプレジデントのケビン・ロビンソン氏に聞いた。

(聞き手は山崎 洋一=日経 xTECH

WPA3は、WPA2の脆弱性であるKRACK(Key Reinstallation AttaCKs)の出現が契機となって作られた規格なのか。

Wi-Fi Alliance マーケティング担当バイスプレジデントのケビン・ロビンソン氏
Wi-Fi Alliance マーケティング担当バイスプレジデントのケビン・ロビンソン氏
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 我々は、この脆弱性を公表した研究者やデバイスベンダーなどと共同で、まずパッチを出すべく取り組んだ。また、それ以降に出るどのWi-Fi CERTIFIEDデバイスも、このWPA2の脆弱性に未対応という事態にならないようにする体制を取った。

 WPA3は、KRACKへの対応を考慮している。ただそれだけではなく、ほかのセキュリティ上のメリットも実装していけるものとして策定した。WPA3ができた背景には、コンピュータの処理能力の向上がある。例えば辞書攻撃(ディクショナリーアタック)などは、非常に高いコンピューティングパワーを必要とする。コンピューティングパワーが上がったのであれば、セキュリティは新しいプログラムで守っていく必要性がある。

 Wi-Fi Allianceでは、次世代のWPAに必要な機能、能力が何かという点を何年も前から検討してきた。その過程において昨年(2017年)、KRACKの一件が起こったということだ。当然KRACKに対応して終わりではなく、セキュリティに必要な能力については、様々な形で継続的に検討し進化させたい。

WPA3の認定デバイスはいつ頃から市場に出回りそうか。

 既に発表済みのものとしては、米クアルコムが同社のチップセットシリーズであるSnapdragonをWPA3に対応させると発表している(編集部注:米クアルコムは2018年夏から「Snapdragon 845」を手始めにWPA3のセキュリティ機能をチップセットに導入すると発表している)。あとはデバイスベンダー各社の判断次第となる。今後いろいろ発表されていくだろう。

 東京で開催したWPA3の発表会では、WPA3への移行期間を取るが、ゆくゆくはWPA3が必須になると説明した。必須になるのがいつ頃かは、過去のケースと比較すると分かりやすいかもしれない。WPA2のときは、最初に策定されてから必須になるまで2年かかった。

 次世代の無線LAN規格であるIEEE 802.11axに準拠したWi-Fi CERTIFIEDデバイスが出てくるのは、2019年の後半から2020年ぐらいだと考えている。当然ながら、それは次世代のWi-Fiデバイスになるので、セキュリティに関してはWPA3に対応するケースが想定できる。こうした背景を考えれば、IEEE 802.11axに準拠したデバイスが出てきたタイミングで、WPA3を必須にするのはあり得るシナリオの1つだと考えている。

 では今あるWi-FiデバイスがWPA3に準拠できないかというと、決してそうではない。既存デバイスのWPA3対応は、より早い時期から進んでいくはずだ。そしてWi-Fi AllianceはWPA2についても、メンテナンスの部分に関して責任を持ってサポートを続けていく。

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