AI(人工知能)の進化は、企業の人材戦略に変化を迫っている。企業が生き残り、成長するために、今後どんな人材を確保していくべきなのか。タレントマネジメントや学習管理システムを手掛ける米コーナーストーンオンデマンド(Cornerstone OnDemand)のマーク・ゴールディンCTO(最高技術責任者)に聞いた。

(聞き手は八木 玲子=日経 xTECH)

AIが進展するなか、企業の人材戦略にとって何が重要になっているのか。

 スキルだ。AIをはじめとするテクノロジーの進化は、多くの仕事を自動化する。スキルを要しない仕事は減り、スキルを持たない人は職を失う。逆にスキルを持つ人には求職者を上回る求人がある。こうしたスキル格差が起こっている。

 これまでは資格や学位が重視されてきたが、これからはスキルが重要になる。これに対応するために、企業は人材マネジメントを進化させなくてはならない。

米コーナーストーンオンデマンド マーク・ゴールディンCTO(最高技術責任者)
米コーナーストーンオンデマンド マーク・ゴールディンCTO(最高技術責任者)
[画像のクリックで拡大表示]

 スキル格差を乗り越えて必要な人材を確保するのは容易ではない。新しい人を採用するより、既に在籍している従業員を定着させるほうが簡単だ。そのために企業は、従業員に個別の能力開発プランを作り、個人に応じた教育を提供することが重要だ。こうすれば、新たなスキルを身に付けられるだけでなく、従業員の離脱を防げる。さらに、従業員の仕事に対するエンゲージメントも高められる。

 コーナーストーンが提供する学習プラットフォームは、AIを活用して従業員別の学習プランを作成する。その人に必要なスキルを判別し、プラットフォーム上にあるたくさんの学習コンテンツから適切なものをレコメンドすることもできる。国内でも、日立製作所や日産自動車、アサヒグループホールディングス、デンソーなどが当社のシステムを活用している。

これから必要になるスキルとは、どんなものか。

 まず「自らのブランドを作るスキル」。デジタル空間でも自分のプレゼンスを高め、自分を見つけてもらいやすくすることだ。

 次に「コンピュータと友達になるスキル」。進化するコンピュータを敵視するのでなく、仲良くなってそのパワーを生かす力が必要だ。3番目は「仲間を作るスキル」。周囲とコミュニケーションし、積極的に情報のある場所に行けることが重要だ。これによって、必要な協業相手を見つけられる。

 「複雑なことを簡単にするスキル」が4番目。複雑な物事をどう理解して、シンプルな解決策に置き換えるかが求められている。そして5番目が「継続するスキル」。国際経済や気候変動などの大きな課題に対して、歯を食いしばって対峙する。そうした粘り強さや気骨を持たなければならない。

 最後にもう1つ、最も重要なものを付け加えたい。それは「メタスキル」だ。スキルを得るためのスキル、つまり生涯にわたって学習し続けるスキルである。学習に対して大いなる好奇心を持つこととも言い換えられる。時代の変化に応じて求められるスキルが代わっても、メタスキルがあれば常に新しい能力を身に付けていける。これを持てるかどうかが、成功するかしないかを分けるだろう。

これらのスキルは、試験のような方法で測定するのは難しい。どう評価するのか。

 それはとても重要なポイントだ。完全な解は私も分からないが、1つ答えになりそうなのが、米マイクロソフト(Microsoft)による米ギットハブ(GitHub)の買収だ。私は買収の理由は「そこに開発者のスキルがあったから」だと考えている。75億ドルという大きな投資をするだけの意義があった。

 GitHubは人のスキルを証明する新しい方法そのものだ。蓄積されたソースコードをテストし、評価し、相互にレビューできる。それによって、その人のスキルが分かる。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。