ベトナムITの雄で、対日オフショア開発を数多く受託してきたFPTグループが変革の時を迎えている。要件定義や機能設計といった上流工程に特化した新会社を2018年7月にスタートさせ、開発案件を一手に引き受けられる体制構築への足掛かりとする。先端技術分野では、力を注ぐスマートファクトリー領域で、日本企業2社から30億円規模の受注を獲得した。沖縄でFPT大学を開校する計画も着々と進む。「我々はもっと日本市場に貢献できる」。FPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長は、こう力を込める。

(聞き手は岡部 一詩=日経 xTECH/日経FinTech

FPTジャパンの社員数が1000人を超えた。日本のIT市場に対する影響力も高まっているのではないか。

 日本向け事業に関しては、ベトナムの開発メンバーを合わせて8000人規模の体制を敷いている。ただし十分とはみじんも考えていない。我々はもっと日本のIT市場に貢献できるはずだ。

 手厚いサポートの提供には顧客の近くにいるべき、というのが当社の方針。そのためにはFPTジャパンの体制をもっと拡充させなければならない。2020年までに3000人、最終的には1万人を目指す。拠点も増やす。今までも東京だけでなく、大阪、名古屋、福岡、沖縄、静岡に拠点を開設してきた。2018年7月に横浜拠点を新設するほか、年内から年明けにかけては広島や仙台にも新たな拠点を設置することを検討している。

FPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長
FPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長
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上流工程に特化した合弁会社を設立

 伝統的なオフショア開発以外でも事業の幅を広げる。ターゲットはソフト開発の上流工程だ。上流工程のコンサルティングができる技術者を多く抱えるアクロホールディングスとFPTアドバンスジャパン(仮称)という合弁会社を新設する。要件定義や機能設計、ビジネスコンサルティングに特化した会社だ。FPTジャパンが90%を出資して、7月1日に営業を開始する。

 今まで、FPTジャパンが上流工程から下流工程までを一括受注できる機会は決して多くなかった。新会社を活用することで、開発プロジェクト全体をカバーし、より効率よくコスト競争力に優れたサービスを提供できるようになる。新会社は1年目で20人、3年以内に上流工程を担える技術者を300人にする計画だ。

 FPTジャパンの体制そのものも見直す。今まではFPTジャパンがオフショア開発に加え、人材派遣やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などの案件を担ってきた。事業の多角化が進むにつれ、効率よく顧客サポートができない面も出始めている。そこでFPTジャパンを持ち株会社とし、傘下に事業会社を抱える体制にする。

 中心的な事業会社は3つ。従来のオフショア開発を手掛けるFPTソフトウェアジャパン。さらに人材派遣やBPO、ビジネスマッチングなどを担うFPTテクノジャパンも発足する。上流工程に特化したFPTアドバンスジャパンも、中心的な役割を担う事業会社の1つという位置付けだ。

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