バックアップ方法の特性

 前述の要件を満たすためには、さまざまあるバックアップ方法の中から適切なものを選択しなければならない。そのため、それぞれの方法がどのような要件に対応できるのかを理解しておくことが重要だ。ここでは、前述した観点で以下に挙げる方法を整理してみよう。
1.テープ装置などの外部機器へのバックアップ
2.レプリケーション(ストレージ筐体間複製)機能の利用
3.クローン(ストレージ筐体内複製)機能の利用
4.スナップショット機能の利用

表2 バックアップ方法の特性
表2 バックアップ方法の特性
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 表2で示したように、外部機器へのバックアップとレプリケーションは、ストレージの障害で全データが消失した場合でも対処できる。リモートサイトを活用すれば本番サイトが被災した場合でもデータを失うことはない。非常に幅広い事象に対処できる「最後の砦」として利用できるバックアップ手法だ。

 一方、データ復旧の観点で見ると、外部機器からのリストアは1日前のデータを長時間かけて戻すケースが多い。レプリケーションの場合は複製から比較的直近のデータを短時間で戻すことができる。この二つの方法は、RPOとRTOの観点で大きく異なる。

 次にスナップショットとクローンは、どちらもストレージ障害による全データの消失には対処できない。さらにスナップショットは、本番領域に変更があったデータ(差分データ)だけを保持する仕組みのため、ディスクの多重障害などで本番領域が消失するとデータを復元することができなくなる。スナップショットで対処できる事象はユーザーの誤操作やアプリケーションの不具合などによりデータが消えた場合に限られる点に注意して頂きたい。一方、クローンはストレージ内で本番領域とは物理的に異なる領域に複製を作るため、本番領域が消失する事象にも対処可能だ。

 データ復旧の観点では、どちらもストレージの機能を使って高速にデータを復旧できる。短いRTOを実現できる点が特長だ。運用環境にもよるが、スナップショットは1日に複数回取得することがある。一方、クローンは1日1回のケースが多くRPOの観点では多少違いがある。