バックアップしたデータをちゃんとリストアできる自信はあるだろうか? 国内企業の91%のIT管理者が問題発生後の情報復旧に自信がないと答えている(図1左)。

図1 データ保護に関する世界的な意識調査
図1 データ保護に関する世界的な意識調査
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 一方、適切な予算配分をせずに「とりあえずバックアップが取れていればよい」という考えで作ったバックアップインフラでは、深刻なデータ消失や長時間のシステムダウンを招いてしまう恐れがある。我々の調査では、データ消失とダウンタイムから生じる国内企業1社あたりの損失が2億円を超える結果が出ている(図1右)。

 このような事態を避けるために、今回はバックアップの基本的な考え方やバックアップ装置の技術トレンドを紹介する。所有するバックアップインフラの再点検に役立ててほしい。

バックアップ要件の定義

 何か起きた時に消失しては困るデータを戻せるように備えておくのがバックアップの原点だ。何からデータを守り、どのような条件でデータを復旧できるかがバックアップでは最も重要なポイントとなる。このポイントを押さえていなければ、データを消失してしまったり戻したデータが意味のないものだったりしかねない。

(1)どのような事象に備えるか

 最初に備えるべき事象を想定しよう。たとえば、ユーザーの誤操作によりファイルが消えた場合に備えるのか、ストレージ内の多重障害により全データが消えた場合に備えるのかなどレベルはさまざまだ。データの重要度、ビジネスへの影響などを想定しておこう(表1)。

表1 データ消失の主な事象
表1 データ消失の主な事象
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(2)どのような条件でデータを復旧できるか

 次にデータを戻すときのことを考える。これは、RPO(目標復旧時点)とRTO(目標復旧時間)の2つの軸で整理できる。事象発生時点からどの程度直近のデータを戻せるか(RPO)、どの程度の時間内で戻せるか(RTO)の目標を定義する。これらは業務への影響などを考えて慎重に検討しなければならない。誰しもできるだけ直近のデータに短時間で戻すことを求めるだろうが、目標レベルが高くなるにつれバックアップインフラのコストが上昇する傾向にあることも覚えておこう。