調査内容 2009年第3四半期IT予算の分野別前年同期比増減率,分野別予算額
調査時期 2009年9月中旬~下旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3215件(1127件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に行った2009年9月調査で,2009年第3四半期(2009年7月~9月期,3Q実績)のIT予算の前年同期比増減率を,適用業務アプリケーションやITインフラの分野,ハード/ソフト別などに細分して聞いた。

 今回の3Q実績も,2009年第2四半期(4月~6月)(前回2009年6月調査,2Q実績)に続いて,提示した全23分野の四半期予算の前年同期比増減率の平均値は,すべて20%以上の大幅なマイナスだった(図1。うち1分野は今回の調査では回答数30未満のため参考値。平均の算出方法は下の「調査概要」参照)。

 ただし,2Q実績の-25.9%~-42.2%と比較すると,今回の3Q実績は-22.8%~-36.6%で,22分野すべての前年同期比の予算減少率が2Q実績より小さくなった(今回の調査で参考値扱いの「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」分野を除く)。2009年第1四半期(1月~3月)(2009年3月調査,1Q実績)での-8.7%~-32.7%の水準までは戻っていないものの,7月~9月期で,前年同期比の予算減少率の拡大にひとまず歯止めがかかった模様だ。

仮想化,ハード,インフラ,会計,人事などの投資も回復

 分野別に,3Q実績の結果を2Q実績と比較すると,最も大幅に前年同期比の予算減少率が小さくなった(プラス側に押し戻した)のは「新規システム開発」。2Q実績では全分野中最も減少率が大きい-42.2%だったが,今回の3Q実績では-24.1%で18.1ポイント回復。1Q実績での-24.7%とほぼ同じ水準に戻った。

 このほか,2Q実績と比較して3Q実績の前年同期比予算減少率が10ポイント以上縮小した分野は,「仮想化基盤,OSの購入」が15.6ポイント(1Q実績-25.5%→2Q実績-39.6%→3Q実績-23.9%)。「アプリケーション(システム)間連携基盤系」も12.3ポイント縮小した(1Q実績-18.1%→2Q実績-38.5%→3Q実績-26.2%)。

 ほかにも「ネットワーク系(WAN,LAN,電話)」が2Q実績と比較して11.9ポイント,「ストレージ系」が11.6ポイント,「ハードウエア購入」と「人事・給与」が10.3ポイント,「会計」が10.0ポイント,それぞれ前年同期比予算減少率が小さくなった。

 図示していないが,前年同期比予算減少率が大きく改善した分野の回答の内訳を見ると,「完全に削減」という回答の比率が2Q実績(2009年6月調査)に比べて小さくなったのが目立つ。例えば「新規システム開発」は「完全に削減」の比率が17.3ポイント減(2Q実績33.9%→3Q実績16.5%)。「会計」は「完全に削減」が13.3ポイント減り(同33.0%→19.8%),「90%以上110%以内(前年同期並み)」は15.1ポイント増えた(同32.1%→47.3%)。

7月~9月期の予算平均額は全分野で1月~3月期を上回る

 一方,分野別の四半期予算の平均額(図2。2分野は今回の調査では回答数30未満のため参考値。算出方法は下の「調査概要」参照)では,21分野のうち2分野の平均額が2Q実績(2009年6月調査)に比べて1000万円以上増加。14分野の平均額が2Q実績に比べ100万円~1000万円増で,4分野は2Q実績に比べ平均額が減少した。

 2009年3月調査での1Q実績での平均値と比較すると,今回の3Q(7月~9月)実績は21分野すべてが上回った。2009年は,本来なら年度末でIT投資の山となる1Q(1月~3月)に激しいIT投資の抑制が起きたが,徐々に好転している様子が見て取れる。

「新規システム開発」「既存システムの再構築」が大幅増

 2Q実績に比べて平均額の増加が大きい分野は,「新規システム開発」と「既存システムの再構築」である。「新規システム開発」は2Q実績に比べ約2080万円増(2Q実績約810万円→3Q実績約2890万円)。「既存システムの再構築」は同約1340万円増(同約1340万円→約2680万円)。次いで「SFA・営業系」の同約940万円増(同約2320万円→約3260万円),「アプリケーション(システム)間連携基盤系」の同約840万円増(同約980万円→約1820万円)も大きく四半期予算額の平均値が増えた。

 前回調査の2Q実績では1Q実績に比べて,業務アプリケーション系分野の大幅な予算増が目立った。今回の3Q実績では業務アプリケーション系9分野(うち2分野が参考値扱いで前回と比較できない)のうち,5分野の平均値は2Q実績に比べて440万円~940万円増加しており順調。ただし2Q実績で1Q実績に比べ平均値が約2500万円増と突出した「CRM・顧客関連」は,反動のためか今回は2Q実績に比べ約1700万円減少した。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,何らかの予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム分野の予算(四半期分)と前年同期比増減率を聞いた。新規購入や開発中の案件がなく,四半期のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い,減価償却費のみの場合,それらの本四半期分の総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが,自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「IT予算の前年同期比の平均」は,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「完全に削減」を-100%,「前年同期の50%未満にまで削減」を-75%,「50%以上80%未満にまで削減」を-35%,「80%以上90%未満」を-15%,「90%以上110%以内」を0%,「110%超120%以内」を+15%,「120%超150%以内」を+35%,「150%超200%以内」を+75%,「200%超」を+125%,「前年同期の予算はゼロ」を+200%に換算して加重平均した。
 また本文中の「平均の予算額」は,選択式回答の「本四半期はゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」を4000万円,「5000万円以上1億円未満」を7500万円,「1億円以上3億円未満」を2億円,「3億円以上」を4億円に換算して平均した。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 調査実施時期は2009年9月中旬~下旬,調査全体の有効回答は3215件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1127件。

図1●最新四半期(2009年7月~9月)IT予算の分野別前年同期比増減率(回答者が執行・承認権限を持つ範囲)
図1●最新四半期(2009年7月~9月)IT予算の分野別前年同期比増減率(回答者が執行・承認権限を持つ範囲)
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図2●最新四半期(2009年7月~9月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)
図2●最新四半期(2009年7月~9月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)
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