調査内容 2009年第1四半期IT予算の分野別予算額
調査時期 2009年3月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3097件(1204件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが3月中旬に,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った調査で,2009年第1四半期(2009年1月~3月)のIT予算額を,適用業務やITインフラ,ハード/ソフト別などの分野ごとに聞いた。

 「平均の予算額(予算平均額INDEX)」(算出方法は下の「調査概要」参照)が最も大きかったのは,今回の調査から対象分野に加えた「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」システムで,有効回答数30と少ないものの,提示した他の22分野の2倍以上の約3680万円と突出している。

3カ月前予測を実績が上回った「再構築」「新規開発」「SFA」

 3カ月前に実施した前回2008年12月調査と比較すると,両調査で共通に提示した20分野の中で12月調査(予測値)の平均値より今回の3月調査(実績値)の平均値が大きかったのは,【目的別】の「既存システムの再構築」(12月調査では約1110万円→3月調査では約1630万円)と「新規システム開発」(同約1310万円→約1480万円),【業務別】の「SFA・営業系」(同約1250万円→約1540万円)の3分野だった。

 このうち「既存システムの再構築」と「SFA・営業系」の2009年第1四半期予算の実績値は,2008年12月調査で聞いた2008年第4四半期(2008年10月~12月)の予算額の平均値(「再構築」は約1000万円,「SFA」は約950万円)をも上回っており,厳しい経済環境下でも堅調な投資が続いたと言える。

 ちなみに,1年前の2008年3月調査で聞いた2008年第1四半期(2008年1月~3月)の予算額の平均値と,今回の3月調査で聞いた2009年第1四半期の予算額の平均値の比較では,【業務別】の「会計」がわずかに1年前を上回った(2008年第1四半期は約650万円→2009年第1四半期は約670万円)が,その他の19分野はすべて150万円~1500万円減,比率にして約14%(経営戦略系)~約72%(CRM・顧客関連)のダウンとなっていた。

「CRM」「人事・給与」「生産管理」の予算が3カ月前の予測から激減

 「CRM・顧客関連」分野の2009年第1四半期予算は,前回2008年12月調査での予測値約2100万円に対して,今回調査での実績値では約85%少ない約330万円に落ち込んだ。内訳を見ると,今回の調査では「CRM・顧客関連」に関する有効回答56件の半数の28件が「本四半期は予算ゼロ」。2008年12月調査(n=54)での21件(約39%)から大幅増。逆に2008年12月調査では約7%あった「1億円以上3億円未満」という回答が,今回の調査では1件もなかった。

 今回の調査では「人事・給与」の2009年第1四半期予算も,2008年12月調査での予測値(約1310万円)から約4分の1の約330万円に激減。「生産管理」は3カ月前の予測(約1120万円)の約3分の1の約370万円となった。

 このほか,3カ月前の2009年第1四半期予算の予測に対して今回の実績が4割以上ダウンしたのは,【業務別】では「経営戦略系」(約2140万円→約1190万円)のみ。適用業務アプリケーション8分野の中では「CRM」「人事・給与」「生産管理」「経営戦略系」の4分野が,3カ月前の予測値に対して実績値が大きく下回ったが,「SFA」は実績値が上回り,「物流」と「会計」は10~20%の小幅な差だった。

 残る「SCM」は,3カ月前の予測値と実績値の差が約40万円で,2009年第1四半期予算はほとんど予測値通り。だが「SCM」は3カ月前の予測値の段階で,2008年第4四半期の予算(約2640万円,2008年12月調査)のほぼ半分の約1420万円に削減されていた。

運用,セキュリティー,情報共有/発信系も3カ月前予測を大きく下回る

 システム・インフラ7分野(今回の調査から対象分野に加えた「エンタープライズ・アーキテクチャー」を除く)の2009年第1四半期予算は,「アプリケーション(システム)間連携基盤系」(3カ月前予測は約1290万円→今回実績は約1090万円)と「ネットワーク系」(同約910万円→約810万円)の予測値と実績値の差が10~20%と比較的小さく,「ストレージ系」は約30%差。

 【インフラ系】の残り4分野は,3カ月前の予測値を実績値が大きく下回った。「情報系(グループウエアや情報共有)」が約6割,「運用・危機対策/ビジネス・コンティニュイティー系」と「セキュリティー」が約5割,「インターネット系(情報発信,電子商取引,マーケティング関連)」が約4割,それぞれ予測値を実績値が下回っている。

 このほかの分野では,前述した「既存システムの再構築」と「新規システム開発」は3カ月前の予測値を実績値が上回ったのに対して,「運用・保守開発(信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む)」は予測値を実績値が約4割下回った。

 「ハード購入」と「ソフト(アプリケーション/ミドルウエア)購入」の2009年第1四半期予算は,3カ月前の予測値に対してハードが約18%(約150万円)減の約700万円,ソフトは約32%(約280万円)減の約600万円。今回の調査から対象分野に加えた「仮想化基盤,OSの購入」の2009年第1四半期の平均予算額は,アプリケーション/ミドルウエアとほぼ同じ約620万円だった。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,何らかの予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム分野の予算(四半期分)を聞いた。新規購入や開発中の案件がなく,四半期のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い,減価償却費のみの場合,それらの本四半期分の総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが,自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「平均の予算額(四半期予算平均額INDEX)」は,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「本四半期はゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」を4000万円,「5000万円以上1億円未満」を7500万円,「1億円以上3億円未満」を2億円,「3億円以上」を4億円に換算して平均した。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 今回から提示する分野を見直し,業務別,インフラ系,目的別,ハード/ソフト別のそれぞれに置いていた「その他」を廃止。【業務別】に「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」,【インフラ系】に「エンタープライズ・アーキテクチャー」,【ハード/ソフト別】に「仮想化基盤,OSの購入」の3分野を追加している。
 調査実施時期は2009年3月中旬,調査全体の有効回答は3097件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1204件。

図●最新四半期(2009年1月~3月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)
図●最新四半期(2009年1月~3月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)