調査内容 IT技術者のスキル・レベルに応じた人月単価(カスタマーサービス,ITサービスマネジメント編)
調査時期 2007年12月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 2515件(1009件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数

 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行っている月次アンケートでは,9月から12月までの4回にわたって,IT技術者の職種とスキル・レベルに見合う支払う妥当な対価,ユーザーから見て“値ごろ感がある”単価を調査してきた。9月調査での「コンサルタント」と「ITアーキテクト」職種,10月調査での「プロジェクトマネジメント」と「アプリケーションスペシャリスト」職種,11月調査での「ITスペシャリスト」職種に続いて,最終の12月調査ではITスキル標準(ITSS)が定義している職種のうち,「カスタマーサービス(CS)」と「ITサービスマネジメント(ITSM)」の7専門分野について聞いた。

「運用管理」は同じ上級,中級技術者でも「業務改革コンサル」より月額30万円以上安い

 その結果,7分野の中で最も高い人月単価が“値ごろ”とされたスキル・レベルは,CSの「ソフトウェア」のハイレベル(ITSSでのレベル5~7)で平均約105万円。次いで同じCSの「ファシリティマネジメント」と「ハードウェア」のハイレベルで平均約96~97万円。

 同じハイレベル技術者でありながら,ITSMの2分野の評価は低く,「システム管理」が約92万円,「運用管理」は約88万円で,全4回の調査で対象としたハイレベル技術者22分野の20位と最下位(21位はコンサルタントの「パッケージ適用」で約89万円)だった。この3分野のハイレベル技術者への評価は,コンサルタントの「業務改革」分野のミドルレベル(ITSSでのレベル3~4)技術者への評価額約94万円を下回っている。「業務改革」コンサルタントのハイレベル技術者への評価額は約122万円だから,同じハイレベル技術者の中で月額で34万円もの開きが出た。

 CSとITSMのミドルレベル技術者への評価も,相対的に低め。最も高いCSの「ソフトウェア」の約78万円が最高で,全4回の調査で対象としたミドルレベル技術者23分野の14位。同じCSの「ファシリティマネジメント」と「ハードウェア」の約72~73万円が17位と18位で,ITSMの4分野が20~23位となった。ITSMの中では平均約71万円の「システム管理」と約67万円の「運用管理」がやや高い。ミドルレベル技術者でありながら,ITSMの「オペレーション」(約64万円)と「サービスデスク」(約62万円)は,エントリレベル(ITSSでのレベル1~2)で最高評価の技術者(ITスペシャリストの「分散コンピューティング」とアプリケーションスペシャリストの「業務システム」)と同程度の評価額。ミドルレベル最高評価の「業務改革」コンサルタントとの間にはやはり30万円以上の差がある。運用管理系の技術者にとって厳しい結果となった。

 CSとITSMのエントリレベル技術者への評価も同様の傾向で,調査で対象としたエントリレベル技術者13分野の下位5分野をすべて今回調査のCSとITSM職種が占めた。CSの「ソフトウェア」の約57万円が最高だが,他の職種のエントリレベルでの最低額約59万円(ITスペシャリストの「システム管理」)に2万円の差を付けられた。

 調査対象の58の分野とスキルレベルの中で最低評価となったのは,ITSMの「サービスデスク」のエントリレベル技術者で平均約50万円。前述のエントリレベル技術者の最高評価を受けた2分野からは約12万円の差。全58分野・スキルレベル中最高評価の「業務改革」コンサルタントのハイレベル技術者との比較では,2.5倍近い差となった。

運用系技術者の平均年収は,ユーザーの“値ごろ”評価よりやや高め

 ちなみに,任意団体「ITスキル研究フォーラム(iSRF)」が2006年9月から2007年8月にかけて約3万人の技術者を対象に実施した調査結果(日経コンピュータ2007年11月26日号「特集2」参照)では,CSとITSMの両職種のエントリレベル技術者の平均年収は418万~670万円,コンサルタントのハイレベル技術者の平均年収は919万円(ITSSでのレベル5のみ。レベル6以上は回答数が少なく参考値扱い)。その差は約2.2倍で,今回の調査結果に近い傾向を示している。

 ただしこのiSRFの調査結果では,CSとITSMの両職種の平均年収は,エントリレベルで見る限り全職種の平均年収とほぼ同等(CSとITSMのミドルレベル以上は回答数が少なく参考値扱い)となっている。ユーザーの支払う対価には,技術者の所属するベンダー/インテグレータの間接費や利潤も含まれる。CSやITSM系のサービスでは,間接費や利潤が薄く技術者の給与が原価の中で高い比率を占める「技術者派遣」的ビジネス・モデルの事業者が少なくない。「ユーザーの“値ごろ”水準の低さに比べて,CSやITSM職種の技術者の給与が高目に見える」のは,そうした点が影響しているのだろう。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者に,各職種,スキル・レベルのIT技術者のサービスに支払う妥当な対価を「技術者のスキル・レベルに対して,ユーザーから見て“値ごろ感がある”単価」(最も近い価格帯を一択)という形で,選択式で回答を求めた。本文中の「平均人月単価」は、選択式回答の「月額40万円未満」を35万円,「40万円以上50万円未満」を45万円,「50万円以上60万円未満」を55万円,「60万円以上70万円未満」を65万円,「70万円以上80万円未満」を75万円,「80万円以上100万円未満」を90万円,「100万円以上125万円未満」を112.5万円,「125万円以上150万円未満」を137.5万円,「150万円以上200万円未満」を175万円,「200万円以上」を225万円に換算して平均した。
 調査実施時期は2007年12月中旬,調査全体の有効回答は2515件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1009件。

図●“値ごろ感がある”IT技術者の人月単価(その4:カスタマーサービス,ITサービスマネジメント)
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