写真●米ガートナーのマーク・マクドナルド氏(左)と、ガートナー ジャパンの長谷島眞時氏
写真●米ガートナーのマーク・マクドナルド氏(左)と、ガートナー ジャパンの長谷島眞時氏
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 ガートナー ジャパンは2012年10月5日、「Gartner Symposium/ITxpo 2012」の中で、「CIO(最高情報責任者)が直面している課題:グローバルと日本」というテーマで報道陣向けのセッションを開催した。ガートナーで企業のCIOを対象とした助言サービス「エグゼクティブプログラム(EXP)」を担当する日米のコンサルタント2人が、CIOの悩みについて語った。

 ソニーでCIOを務めた経歴を持つ長谷島眞時エグゼクティブパートナー(写真右関連記事)は、従来の情報システム部門やCIOが、財務会計システムや在庫管理システムの開発・運用を担当する役割だったのに対して、現在ではモバイル端末やソーシャルメディアへの対応など異質の役割も求められていると指摘。「従来型のCIOやIT部門はこうした新しい要求に慣れていない。営業部門などが、IT部門に頼らずに自力でシステム対応を進めようとするケースも多いようだ」と話した。

 これはCIOの権限縮小につながる。ガートナーは「2014年までに、CIOは企業のIT予算の25%に対して支配力を失う」という予測を発表している(関連記事)。長谷島氏は「予算や権限が分散すると、統制が効かなくなって新たなリスク要因になる。本来は、ソーシャルなど新しい領域でもCIOやIT部門がリーダーシップを発揮するのが望ましい。私自身、前職のソニーでIT部門の経験が長かったこともあり、『CIOとIT部門はもっと頑張れ』と思う」と話した。

「IT費用比率」にこだわる時代は終わった?

 一方で、米ガートナーのマーク・マクドナルドGVP&ガートナーフェロー(写真左)は、「Technology>IT」という不等式を掲げて、CIOの役割変化について語った。「ソーシャルやモバイルといった“Technology”は、ERP(統合基幹業務)パッケージやSCM(サプライチェーン管理)システムといった従来の“IT”とは根本的には異なる。“IT”時代のコスト管理の考え方をそのまま適用するのは良くない」と主張した。

 さらにマクドナルド氏は、「経済が安定成長していた時代には、ITの総コストを一定水準に抑えることが重要だった。だが今は何もしなければ売上高は減ってしまう。コスト抑制ばかりに焦点を当てていると、ビジネス上の成果は出せない」とも強調した。

 これに関連して、長谷島氏は「IT費用の考え方を見直すべき時期に来ているのではないか。日本企業では『売上高に占めるIT費用の比率』という指標があって、これが高いのは悪いことだという風潮がある。本来は費用を下げるべき領域と、費用をかけてでも実験的なことをどんどんやるべき領域があるはずだ」と問題提起した。

 長谷島氏はその後講演にも登壇し、CIOの果たすべき役割について語った(関連記事)。