写真●講演するガートナージャパンの長谷島眞時エグゼクティブプログラム グループバイスプレジデント兼エグゼクティブパートナー
写真●講演するガートナージャパンの長谷島眞時エグゼクティブプログラム グループバイスプレジデント兼エグゼクティブパートナー
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 「CIO(最高情報責任者)の役割は機能的にも領域的にも拡大している。ストライクゾーンが広がっているといえる」。2012年10月5日、ガートナージャパンの長谷島眞時氏はITカンファレンス「Gartner Symposium/ITxpo 2012」でこう語った(写真)。

 ソニーでCIOを務めた経験を持つ長谷島氏はCIOの役割が広がっている現状を野球に例えた。「ツーシームやカットボールなど色んなボールが来ても、(CIOは)それを打たないといけない。しかも審判によってストライクゾーンが違う」。

 ビッグデータやソーシャルといった新技術が登場し、マネジメント層は情報システム部門にビジネスへの直接の貢献を求めるようになっている。「コストの最適化などよりもイノベーションへの期待が大きくなった」。長谷島氏はそんな状況がストライクゾーンを広げる一因になっていると分析する。

 一方で、BCP(事業継続計画)対策や情報セキュリティーなどは、これまで通りに投資を続けないといけない。「こうした投資はマネジメント層にものすごく受けが悪い。『何で今やるんだ』と言われがちだ」。しかし、先送りすれば、悲惨な結果を引き起こす可能性がある。

 長谷島氏はそんな投資を「ROI(投下資本利益率)だけで判断すべきでない」と指摘する。ROIだけで判断すれば、その投資の必要性を見誤るかもしれないためだ。「攻めのITと守りのITのバランスをとらないといけない。忘れてはいけないのは、今やっていることにも戦略があることだ」。

「シャドーIS」を取り込め

 クラウドコンピューティングなどはユーザー部門がITサービスを手軽に使える状況を生み出している。長谷島氏はそのリスクにも言及した。事業部門のなかにあるIT組織や仕組みを指す「シャドーIS」の存在だ。

 シャドーISはシステム部門の管理の外にあるため、情報セキュリティーの問題などを引き起こしやすい。そんな状況を解消するために長谷島氏は「(シャドーISの存在を)否定するのではなく、取り込んでいくべきだ」と話した。

 講演の最後に長谷島氏は聴衆に「CEO(最高経営責任者)のCIOへの期待は増している。それを前向きにチャンスと捉えよう」と語りかけた。