写真1●日本通信の記者会見の様子。左から片山美紀上席執行役員、三田聖二社長、福田尚久専務
写真1●日本通信の記者会見の様子。左から片山美紀上席執行役員、三田聖二社長、福田尚久専務
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写真2●日本通信の訴訟の趣旨
写真2●日本通信の訴訟の趣旨
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 日本通信は2012年4月19日、NTTドコモを相手取り、2010年度と2011年度のパケット接続料の算定式が両社の間で合意した契約に反するとして、算定式の変更などを求める訴えを東京地裁に起こしたと発表した(写真1)。

 同日、都内で説明会を開いた日本通信の三田聖二社長は、「接続料は通信事業の根幹。MVNO(仮想移動体通信事業者)協議会の会長としてもMVNOのビジネスの健全な発展を阻害するような行為は容認できない」と主張した。

 日本通信が問題視するのは、パケット接続料の算定式。同社は2006年11月にNTTドコモに相互接続を申請したが、交渉が決裂して2007年7月に総務大臣に裁定を申請。この結果、「原価+適正利潤」でNTTドコモの通信網を借りる権利を勝ち取った(関連記事)。

 これに基づき、同社は2008年8月にNTTドコモの通信網を活用したサービスを開始(関連記事)。2008年度と2009年度は、当時合意した算定式で接続料を決めてNTTドコモに支払っていたという。しかし、2010年度から「(NTTドコモが)接続料が高くなるような方向に算定式を変えてきた」(福田尚久専務)。

 NTTドコモの都合で算定式を変更できるようにすると「接続料を自由に上げられることにつながる」(福田専務)ため、日本通信は昨年から抗議してきた(関連記事)。昨年秋には、算定式の違いによる差額の支払いを一時停止したこともあった。しかし、NTTドコモから接続を切断するとの通告を受け、やむを得ず、サービス停止を回避するために合意していない算定式による接続料をNTTドコモに支払い続けてきたという。

「お金の問題ではなく、MVNOビジネスの根幹的な問題」

 日本通信が今回の訴訟でNTTドコモに要請しているのは、以下の3点(写真2)。(1)2008年6月にNTTドコモと合意した算定式で接続料を支払う地位にあることの確認、(2)合意した算定式による接続料の総務省への再届け出、(3)2010年度と2011年度の接続料の過払い分の返還---である。(3)の過払い分は計8000万円超だが、福田専務は「接続料を支払い続けている限りサービス停止などはなく、収益面でも事業の運営には問題ない。お金の問題ではなく、MVNOビジネスの根幹的な問題」とする。

 NDA(守秘義務契約)があるため、日本通信は具体的な算定式を公表していないが、通信設備の総コストを、全体のキャパシティに占める利用分(契約帯域)の割合で案分して算出しているもようだ。接続料は「合意した算定式に基づいて毎年更新していく契約になっている」(福田専務)。

 なお、NTTドコモは電気通信事業法で第二種指定電気通信設備を保有する事業者として規制の対象となっているが、接続料などを規定した接続約款は届け出制。総務省が定める「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」でも、接続料の算定式を明確に定めていない。大臣裁定でも接続料の具体的な金額までは踏み込まず、日本通信とNTTドコモの協議で決めた経緯がある。日本通信は事前に総務省に相談して解決を図ったが、NTTドコモとの交渉は不調。算定式と接続料は民民の契約に当たるので、東京地裁に訴えることにした。

ドコモは「実績コストすら回収できない」と主張

 一方、日本通信からの提訴を受けたNTTドコモのコメントは以下の通り。「当社の接続料については、第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドラインに従い、算定している。新しい算定式に基づく2011年度適用分のパケット接続料は対前年度比35%もの大幅低減となっているが、これでは実績コストすら回収できないのが事実で、今後見直しが求められる。たび重ねて説明してきたが、理解が得られず誠に遺憾。争訟では、当局の公正な判断を期待したい」(広報)。

 ただ日本通信は、この言い分についても、「トラフィックが増えているので本来はもっと下がるはず」「2010年にNTTドコモが企業向けサービスを不当廉売していることを訴えたときは、NTTドコモの原価が低い(ので不当廉売ではない)と主張していたのでおかしい」と反論している。