企業の会計基準を決定している企業会計基準委員会(ASBJ)は2010年6月24日、第204回委員会で「包括利益の表示に関する会計基準」の公表を委員全員の賛成により承認した。6月中に基準を公表する見通し。3月期決算の上場企業は、2011年3月期から連結財務諸表で包括利益の表示を義務付けられる。

 包括利益は、ある企業の特定期間における純資産の変動を表すもの(持分所有者との直接的な取引を除く)。IFRS(国際会計基準)や米国会計基準は包括利益の表示を定めているが、日本の会計基準は規定していない。ASBJはIFRSと日本基準との主要な差異を解消するコンバージェンス(収れん)の一環として、包括利益の表示に関する議論を進めてきた。

 今回公表する基準では、包括利益の表示を「平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用する」としている。上場企業の多くを占める3月期決算の企業は、2011年3月期から適用することになる。加えて、「平成22年9月30日以後に終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用することができる」とする。

 個別財務諸表に関しては適用時期を明記せず、「企業会計審議会で全般的な議論を進めており、基準公表から1年後をめどに判断する」旨を示している。非上場企業については「懸念を表明する意見が寄せられている」とし、「関係者が検討を進めており、本基準外で別途の対応を図ることもあり得る」としている。

 2009年12月に公表した公開草案では、個別財務諸表と連結財務諸表の双方に対して同時に適用するとしていた。これに対し、反対する意見が出ており、IFRS適用のロードマップを示した「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」(関連記事)で「連結先行」の考え方を示していることから、連結財務諸表への適用を先行させた。今回の議論により、ASBJは基準の公開を当初計画より3カ月遅らせた(関連記事1関連記事2)。

 今回の基準の適用初年度は「その直前の年度における包括利益および「その他の包括利益」の内訳項目の金額を注記する」必要がある。ただし、その他の包括利益に含まれる税効果の金額などの注記事項については、2012年3月31日以後終了する連結会計年度からの適用としている。