総務省は2008年6月13日,3.9世代携帯電話(3.9G)導入に向けて技術的条件を専門的に調査するIMT-2000高度化作業班(3.9G作業班)の第4回会合を開いた。第1回(関連記事),第2回(関連記事),第3回(関連記事)に続き,3.9Gシステムの動向について,ノキアシーメンスネットワークス,日本エリクソン,モトローラの3社がプレゼンテーションを行った。

 今回プレゼンの中心となったのが,HSPAの高度化システムの動向だ。ノキアシーメンスネットワークスと日本エリクソンは,3.9Gシステムの本命と見られるLTEに加えて,データ変調方式の多値化などによってHSPAを高速化するHSPA Evolution(HSPA+)と,帯域を2重化して高速化するDC-HSDPA(dual cell-HSDPA)の動向について紹介した。

 HSPA Evolutionは段階的に高速化が進んでおり,現在は第3世代携帯電話の標準化団体「3GPP」が定めた標準スペック「3GPP Release7」として,下りのデータ変調方式に「64QAM」を利用し,最大22Mビット/秒程度の速度を実現する仕様が標準化されている。この仕様については,総務省が現在パブリックコメントを募集中の,アイピーモバイルが返上した2GHz帯の技術的条件の改訂に伴った報告書案にて,既存の3Gバンドを対象とする技術仕様として既に含まれている(関連記事)。

 HSPA Evolutionは今後,2×2 MIMO(multipule-input multipule-output)技術が加わり,下り最大42Mビット/秒に高速化する。こちらはLTEと同じく3GPP Release 8としてまとめる計画で,2008年12月に標準化が完了する予定だ。

 一方のDC-HSDPAは,HSPAで利用する5MHzの帯域を2重化して高速化を実現する技術。3.9G作業班の第1回でクアルコムジャパンも紹介していたが,2008年6月に開催された3GPPの会合にて,正式なワーク・アイテムとして承認されたという。帯域が2倍になれば速度は2倍になるため,HSPA Evolutionと組み合わせることで,さらに2倍程度の高速化が見込める。DC-HSDPAは,LTEなどと同じ3GPP Release 8に含まれる予定。ただし標準化完了の時期は,2009年6月ころにずれ込む見込みという。

 ノキアシーメンスネットワークスと日本エリクソンは,このような動きを踏まえた上で,「3.9Gのシステムとしては,LTEに加えてHSPAの高度化システムも有力な技術。事業者が技術を選択できる形にすべき」とそれぞれ意見を述べた。

 HSPA Evolutionについては,過去の3.9G作業班でソフトバンクモバイルやイー・モバイルも興味を示しており,今後LTEとHSPA Evolution,DC-HSDPAを念頭に置いた議論が進みそうだ。

 なお次回の会合からは,3.9Gシステムの利用イメージや機能・要件などをまとめる基本コンセプト作りに着手する。基本コンセプトは,2008年7月末の携帯電話等周波数有効利用方策委員会にて報告する予定となっている。