総務省は2008年5月20日,2GHz帯に追加する技術方式の条件を検討する「2GHz帯TDD方式技術的作業班」の第4回会合を開催,報告書案をまとめた。検討対象となっている2GHz帯(2.01G~2.025GHzの15MHz幅)は,元々2005年11月にアイピーモバイルに割り当てられ,その後同社の資金繰り悪化により2007年10月に返上された周波数帯(関連記事)である。

 この報告書案を受けて総務省は,5月29日に携帯電話等周波数有効方策委員会を開催。その後パブリックコメントの募集,答申を経て2GHz帯の技術的条件を改定する予定である。改定後に2GHz帯を使う事業者を再度募集することになる。

 現在の電波法施行規則では,2GHz帯は「TD-CDMA」もしくは「TD-SCDMA」のいずれかの第3世代携帯電話方式でしか使えない。そこで,他の方式での使用を検討し,そのための技術的条件をまとめるのが同作業班である。同作業班は「情報通信審議会 情報通信分科会 携帯電話等周波数有効方策委員会」の下に設置されている(関連記事1関連記事2)。

 作業班では2GHz帯の技術方式として,(1)モバイルWiMAX,(2)IEEE802.20 625k-MC,(3)次世代PHS,(4)UMB-TDDおよびIEEE802.20 Wideband,(5)E-UTRA TDD(LTE TDD)の各TDD(time division duplex)方式の技術的条件を検討。このほ か,別の議論としてTDD方式ではない第3世代携帯電話(3G)システムであるW-CDMA (HSPA)の技術的条件を併せて検討した。

 今回の報告書案ではW-CDMAの技術的条件の新たな変調方式として,基地局側に「64QAM」(64 quadrature amplitude modulation),移動局側に「16QAM」が加わった。またシステム設計上の条件には,パケット通信方式のデータ伝送速度として「上り回線で最高12Mbps程度」「下り回線で最高22Mbps程度」との文言が加えられた。これらはいずれも現行のHSDPA(high speed downlink packet access)を高速化した「HSPA Evolution」(HSPA+)を念頭においたものである。

 なお,現在総務省は3.9世代携帯電話(3.9G)の商用化に向けた技術条件の検討を開始しており,そこでは1.5GHz帯の割り当てを視野に入れている(関連記事)。2GHz帯の技術条件が改定されれば,3Gの高速化を目指す事業者にとっては,新たに2GHz帯(2.01G~2.025GHz)と1.5GHz帯の二つが割り当て周波数帯の候補に加わることになる。

【変更履歴】
2GHz帯(2.01G~2.025GHz)でHSPA+が使えるかのような表現があったため,下記を変更 しました。 タイトルを「HSPA+も視野に,アイピーモバイル“跡地”利用」から「HSPA+も議論,ア イピーモバイル“跡地”利用作業班で」に変更。 また,4段落目は当初, 「作業班では,(1)モバイルWiMAX,(2)IEEE802.20 625k-MC,(3)次世代PHS, (4)UMB-TDDおよびIEEE802.20 Wideband,(5)E-UTRA TDD(LTE TDD)の各TDD(time division duplex)方式と,TDD方式ではないものの第3世代携帯電話(3G)システムで あるW-CDMA(HSPA)の技術的条件を検討。 」 となっていましたが, 「作業班では2GHz帯の技術方式として,(1)モバイルWiMAX,(2)IEEE802.20 625k-MC,(3)次世代PHS,(4)UMB-TDDおよびIEEE802.20 Wideband,(5)E-UTRA TDD(LTE TDD)の各TDD(time division duplex)方式の技術的条件を検討。このほ か,別の議論としてTDD方式ではない第3世代携帯電話(3G)システムであるW-CDMA (HSPA)の技術的条件を併せて検討した。 」