写真1●KDDIの小野寺正社長兼会長
写真1●KDDIの小野寺正社長兼会長
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 KDDIは2008年4月24日,2007年度通期の決算を発表した。連結の売上高は対前年比7.8%増の3兆5962億8400万円,営業利益は同16.2%増の4004億5100万円,経常利益は4079億2600万円の増収増益となった。売上高の4分の3以上を占める移動通信事業が引き続き堅調で,5期連続の増収増益を達成した。

 移動通信事業の売上高は対前年比6.9%増の2兆8626億円,営業利益は同18.0%増の4550億円と堅調に推移。215万加入の純増を確保し,以前から目標としていたau事業での3000万契約突破を達成した。

 固定事業の売上高は対前年比0.6%増の7186億円,営業損益は647億円の赤字となった。3月末時点の契約数はメタルプラスが328万,FTTHが71万となっている。

今年度は増収増益見込みも,au純増数は大幅減の予想

 同社の小野寺正社長兼会長(写真1)は,2008年度通期の見通しも発表した。売上高は前年比2.9%増の3兆7000億円と予測。移動通信事業で,販売一時金が抑えられる新販売スキームの拡充を見込むことから,営業利益も2ケタ増となる同10.6%増の4430億円を見込んでいる。

 ただ移動通信事業に関しては,曲がり角を迎えていることもうかがわせた。「市場の伸びは縮小すると見ている」(小野寺社長)という言葉の通り,純増数は2007年度の215万に比べて,約4割減となる126万と予測した。市場全体の純増数も,2007年度の564万と比べ(関連記事),大幅減の390万と予想しているという。

 小野寺社長は「個人市場については伸びが縮んでいくのは確か。しかし通信モジュールや法人向け市場は将来的にまだまだ大きく伸びる。例えば国内6000万台のクルマに通信モジュールが載るだけでも大きな市場が見込める。現時点ではまだ我々に十分な力が無いが,今後はこうした市場を開拓していかなければならない」と語った。

 また2007年度のau事業は,電池の不具合(関連記事)や端末プラットフォームの開発の遅れ(関連記事)などトラブルも目立った。小野寺社長は「先進的といわれたauの特徴が少し失われた年だった」と総括。今後については,「もう一度auらしさを追求していく」と語り,既存顧客を重視する戦略を打ち出したNTTドコモに対して(関連記事),「我々は既存顧客を守ると同時に新規も取っていく」(同)という立場を示した。

3.9Gの方式選択は「マーケットを見れば分かる」

 小野寺社長は,総務省でも議論が始まった3.9世代携帯電話(3.9G)についてもコメントした。「(W-CDMAの延長技術である)LTE(long term evolution)と(CDMA2000の延長技術である)UMB(ultra mobile broadband)は技術的な差異はほとんどない。最終的にはマーケットを見ながら決定する。我々は非常識な選定をするつもりはない。まだ正式決定していないが,マーケットを見ていただけたら自ずと(我々の選択は)分かるのではないか」(同)と語り,国際標準になる可能性が高いLTE採用に前向きであることをほのめかした。