写真 NECが同社の展示会「iEXPO 2005」に参考出典したM1000用のIP電話アプリケーション
写真 NECが同社の展示会「iEXPO 2005」に参考出典したM1000用のIP電話アプリケーション
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 NTTドコモが高機能端末「FOMA M1000」(米モトローラ製)を発売したのは今年7月。FOMAと無線LANの一体型端末で,海外の携帯事業者で数多く使われている通信方式のGSM/GPRSも使用できローミングに対応。文書ビューアやフルブラウザ,VPNクライアントなどのアプリケーションを搭載し,ビジネス向けに武装した。

 さらにこの端末はスマートフォンであり,出荷時に搭載されていないアプリケーションも追加して使える。しかもそのアプリケーションは,従来からあるJavaのアプリケーションと比べて,端末の各機能を自由に制御できる。OSは英シンビアンの携帯向けOS「Symbian OS v7.0」。誰でもC++やJavaを使って,アプリケーションを開発することが可能だ。また19Mバイトの大容量メモリーを内蔵しており,端末内に多くのデータを蓄積してアプリケーションから操作できる。

業務システム連携のミドルウエアが次々登場

 同機の発売に前後して,アプリケーション・ベンダーやシステム・インテグレータが続々と,業務用アプリケーションの開発を発表した。日本オラクル,日本IBM,NEC,シトリックス・システムズ・ジャパン,ソフトフロント,アイエニウェア・ソリューションズといった面々が名乗りをあげている。企業の業務システムとクライアント端末を連携させるミドルウエアを手がけるベンダーが目立つ。

 例えば日本オラクルは,M1000用のデータベース「Oracle Database Lite 10g for Symbian」を準備中。“ライブラリ”と呼ぶM1000用ミドルウエアと組み合わせて使うと,「圏内に入ったら,携帯電話のデータベースを社内データベースと自動的に同期させる」などの処理を行える。地下倉庫や地下鉄などの圏外で,携帯に在庫情報や業務日報を入力しておけば,その情報が自動的に本社に送られるといった活用法が実現する。

 M1000にVoIPアプリケーションを追加搭載してIP-PBXと連携させるモバイル・セントレックスも,実現の目が出てきた。ソフトフロントが11月,プロトコルにSIPを使うVoIPミドルウエアの提供を開始した。NECが12月7日から開催した展示会「iEXPO 2005」で,このミドルウエアを使い開発したIP電話アプリケーションを参考出典(写真)。実際に通話する様子を披露した。また今夏にはブィ・エル・アイが,携帯電話をトランシーバのように使うPTT(push to talk)アプリケーションの開発を表明している。

 ほかにもシン・クライアントや音声認識,グループウエア同期,クレジット決済システムなど,多彩なアプリケーションが発表済み。こうしたアプリケーションを,端末の購入後でも導入企業のニーズに合わせて追加搭載し,業務システムと連携させられる。

2006年はビジネス・ケータイ開花の年

 実はM1000は,シンビアンのOSを搭載するスマートフォンとしては日本で2機種目。1機種目はボーダフォンが2004年12月に発売した702NKだ。この端末もフルブラウザ「opera」などのアプリケーションを購入してインストールできるなど,異彩を放っていた。

 シンビアンのOSを採用した端末は,国内でも数多い。だがスマートフォンとして発売された製品は上記の2機種と,ボーダフォンがこの12月に出した702NKIIの3機種である。しかし海外ではシンビアンのOSを搭載したスマートフォンが数多く出ており,膨大な数のアプリケーションが売られている。

 この流れは日本にも波及している。例えばフィンランドのノキアは10月,企業向け市場をねらったスマートフォン「Eシリーズ」3機種を発表。その全てがW-CDMA/GSMに加えて無線LANを搭載し,うち2機種はフルキーボードを備える。

 同シリーズが企業向けたる所以は,無線IP電話端末として利用でき,デバイス管理も可能であることだ。米シスコシステムズ,米アバイアの2社のIP-PBXと組み合わせて無線VoIP端末として利用可能。12月には国内で,SIPサーバーにE60のデモ機を無線LANで接続して通話するデモを披露している。ノキアとシスコ,ノキアとアバイアのタッグが,モバイル・セントレックス市場をさらに活性化させることになるかもしれない。

 デバイス管理は携帯電話向けアプリケーションの標準であるOMA(open mobile alliance)が定めた管理仕様に準拠している。端末にインストールしているアプリケーションや保管しているファイルを把握。管理者側から強制的に更新するなどの操作をすることが可能だ。同社はEシリーズを是非とも日本で販売したい考え。携帯事業者にも積極的に売り込んでいくが,それとは別にインテグレータなどと組み,携帯事業者を限定せずに使える端末として販売する方法も模索している。

 携帯電話を企業の業務システムとより密接かつ柔軟に連携させるには,従来のアプリケーション開発・実行環境だと端末の機能を十分に発揮できない。だからこそ,従来は搭載機能をかなり限定し,また固定化してきた端末をオープン化することが必要なのだ。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション

●日経コミュニケーション編集部より 掲載当初,M1000の搭載OSを「UIQ2.1」と表記しましたが,「Symbian OS v7.0」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。2005.12.21

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