NECが2006年12月に発売した重さ1キログラムを切るノート・パソコン「VersaPro UltraLite」。そのマザーボードには、最終工程で切り落とされるものの、工場内ではICタグが付いている(写真1)。NECパーソナルプロダクツSCM改革推進部の若月新一グループマネージャーは、「日本で製造する新製品は、中国で作る製品より10倍高い品質達成が目標だった。ICタグがそのキー・ツールだ」と話す。

写真1●部品用通い容器にICタグ付けて入荷を検品するためのゲート(左)
写真1●部品用通い容器にICタグ付けて入荷を検品するためのゲート(左)
下はパソコンのマザーボードに付けたICタグ、下側に見える白い部分がアンテナ(写真:柳生 貴也)

 マザーボードにICタグを付けたのは、装着した部品の品番などを個品単位でトレースするため。部品に障害などが発生した際に、同部品を組み込んでいる対象商品を早期に特定したいからだ。マザーボードの端に実装したICタグを、製造ラインに組み込んだリーダーで読み取っていく。

 量産型パソコンのマザーボードは現在、そのほとんどが中国で生産されている。どの部品を組み込んだかは、時折ラインを止めては、人がマザーボード上のバーコードを読む取ることで記録している。マザーボード1枚1枚のトレースができないだけでなく、人手に頼る分、記録精度は高くなかった。

 NECは、パソコンの生産管理におけるICタグの利用範囲を拡大している。06年12月には、部品の入荷検品を自動化するため、ゲート型リーダーを工場に設置した(写真6)。部品の通い箱に貼り付けた生産指示票のカンバンに内蔵するICタグを、一括で読み取る。「不要なICタグを読まないよう、技術改良を続けた。1年かけてようやく完成した」(若月グループマネージャー)。

 マザーボードに取り付けたICタグは、パソコンきょう体への装着前に切り離している。切り離さず、きょう体の外から読み取るようにすれば物流業務などにも適用できそうだ。だが実際には難しい。パソコンなどの精密機器は、安全面から電波の漏洩防止が求められるため、ICタグは使えない。「ICタグを製品に埋め込むなら、きょう体の外側になりそう」(若月グループマネージャー)という。

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