ゴロゴロと、大型キャリアで反物を運ぶのは、カジュアルシャツ用生地の老舗メーカー、植山織物の植山和樹社長。反物の一本一本にICタグを貼り付けた。入出荷時は、据え置き型リーダーの前を横切るだけで、検品が完了する(写真1)。植山社長は、「ここまで在庫精度が高まるとは、予想以上の効果だ」と話す。

写真1●反物にICタグを貼り付けて検品や棚卸しの精度を向上
写真1●反物にICタグを貼り付けて検品や棚卸しの精度を向上
(写真:竹内 由美子)[画像のクリックで拡大表示]

 植山織物が製造するのは、先に糸を染めてから織る先染織物。高価格帯のシャツをターゲットに、約4000種の製品を持つ。同社にとって、在庫管理が難しいのは、製品種類の多さだけが原因ではない。デザインを競うシャツ自体は、時代とともに入れ替わるが、「生地のデザインは流行が一巡するとまた戻ってくるため、10年以上在庫している商品が少しずつ売れ続ける」(植山社長)。結果、同社の倉庫には3万5000本もの反物が在庫として積み上がる。

 ICタグが真価を発揮するのは棚卸しの時だ。これまでは、15人が2日をかけて実施する大仕事で、年2回が限界だった。それが今は、1人が半日で終える作業になった。高さ3メートルの棚に積み重ねた反物を、長いポールに3枚のアンテナを据え付けたモバイル・リーダーを使って、ICタグを一括で読み取る。

 作業日数だけでなく、目視では避けられなかった数え間違いやシステムへのデータ入力ミスもない。在庫精度の向上で、かつては月に何度か発生していた在庫切れ商品を受注してしまうようなミスも、ほぼなくなった。

 植山織物が導入したICタグは、無線周波数にUHF帯を使う最新型のシステムである。UHF帯は通信距離が3~5メートルと長いのが魅力だ。06年1月に電波法令が改正され、本格利用が可能になった。植山社長は05年9月、まだほとんど試作品だった機器を見て、即座に導入を決断したという。

 システムの導入コストは2300万円。単価50円強のICタグは使い捨てだが、検品などの外注作業費用が反物1本当たり150円かかっていただけに、お釣りがくる。現在同社は、新しい倉庫を建設中で、外部に委託してある2万本の在庫を引き取り、全在庫にICタグを貼付する計画だ。

【目次】
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