KDDIのLTEネットワークが、4月27日(関連記事)、5月29日(関連記事1関連記事2)、5月30日(関連記事)と立て続けに通信障害を起こした。電気・水道・ガスと並び、“ライフライン”という位置づけになった携帯電話が、長時間使えないという状況はあってはならないこと。しかし百歩譲って考えると、人間が関わるものである以上、落ちるものは落ちる。「絶対」はないのだ(関連記事1関連記事2)。

見えない電波はキャリアへの信頼がベース

 再発防止のため、システムの冗長化などの取り組みを強化することはもちろんだが、落ちたとしても短時間で復旧できるような「減災」の体制・仕組みづくりに取り組んでほしい。

 ただ今回のKDDIの障害は、通常の障害よりもはるかに深刻である。2日連続の通信障害のわずか8日前の5月21日、KDDIのLTEネットワークの実人口カバー率にかかわるカタログなどへの表記が広告表示法に違反するとして、消費者庁から措置命令を受けたばかりだったからだ(関連記事)。

 KDDIのカタログなどでは、「iPhone 5」で使っている2.1GHz帯・10MHz幅の下り最大75Mbps対応エリアが、実人口カバー率で96%であるかのように誤解を招きかねない表記となっていた。措置命令を受けた後、KDDIは、実際にはそのカバー率が14%だったことを明らかにしたが、よりエリアの広い2.1GHz帯・5MHz幅の下り最大37.5Mbpsの実人口カバー率を公開しなかったことが、事態をより深刻化させた。「KDDIのiPhone5のLTE対応エリアは、実人口カバー率14%」という誤った情報が流布してしまったのだ。

 このようなことがあった直後の障害だったことから、ネット上には「KDDIへの信頼が失墜した」といった書き込みがあふれた。恐らくauショップやコールセンターなど顧客接点では、対応に追われたことだろう。この一連の不祥事によって、KDDIのブランドイメージがダメージを受けたことは間違いない。

 携帯電話ユーザーは、日々、見えない電波を必死につかもうと奮闘している。キャリアから発表される人口カバー率や速度、基地局数などの数値は、ユーザー自らが検証するすべもなく、言われたことを信じるしかない。ユーザーが体感する品質と、キャリアの言う数値に多少乖離があったとしても、多くのユーザーは心の中に疑念を抱えながらも使い続ける。

 そして、今回のようなユーザーを「欺く」行為が表出した瞬間、ユーザーとキャリアとの信頼関係は崩壊する。「見えないモノ」を信頼できない人から買いつづける人はいない。