本連載は、筆者が2006年に担当した内部統制に関する連載以降の内部統制に関する法律、判例など一連の法環境の変化につき、アップデートするものである。前々回、前回は会社法における内部統制にかかわる話題を中心にアップデートした。今回は、金融商品取引法における内部統制につきアップデートすることとする。
内部統制報告制度の導入
金融商品取引法が2006年6月に成立し、財務報告に係る内部統制(いわゆるJ-SOX)が明文化された。その背景として、当時、大企業の粉飾決算などの不祥事が続いたことがある。
具体的には、以下のような規定がなされた。まず、第24条の4の4において、以下のように規定された。
次に、第193条の2の第2項では、以下のように規定された。
上記条文の成立の経緯は、過去に筆者の連載で説明したので、そちらをご覧いただきたい(「金融商品取引法における内部統制の実体」)。 要は、米国SOX法の第404条とほぼ同様の規定が盛り込まれるようになったということである。
上記のような財務報告に係る内部統制報告制度は、対象会社における影響が大きいことから、施行時期は金融商品取引法の成立から数年後とされた。このため、2009年3月期の会社より義務付けられることとなった。
2007年2月には「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」が公表された。その後金融庁は「内部統制報告制度に関するQ&A」を3回にわたって公表した(最終公表は2009年4月2日)。
現在、財務報告に係る内部統制の作成にあたり、重要な法規として以下のようなものがある。
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(企業会計審議会策定、以下「基準」)
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(企業会計審議会策定 、以下「実施基準」)
- 内部統制報告制度に関するQ&A(金融庁策定)
- 監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取り扱い」(日本公認会計協会策定、以下「取り扱い」)
基準自体の混乱は、内部統制報告制度導入後もそれほど大きくはなかったと思われる。上記各基準が比較的詳細かつ数値目標が定められるなど明確に策定されたこともその一因である。
対象会社は上記の基準を意識して内部統制報告書を作成する。監査法人は上記各基準に依拠してクライアントの内部統制報告書をレビューする、という運用が定着したところである。