米Googleの書籍全文検索サービス「Google Book Search」(画面)をめぐる集団訴訟の和解案が最終局面で頓挫した。ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は2009年9月24日,予定されていた公聴会の延期を決定した。この和解案はGoogleと,原告側である米国の作家団体Authors Guildおよび米国出版者協会(AAP:Association of American Publishers)が2008年10月に合意していたもの。連邦民事訴訟規則によって集団訴訟の和解は当事者同士だけでは行えず,裁判所の承認が必要となる。そのための公聴会が2009年10月7日に予定されていたが,ここに来てさまざまな反論が世界中から巻き起こった。
米Amazon.com,米Microsoft,米Yahoo!が8月に図書館関係者や出版社などとともに和解案に反対する組織を発足させたほか,ドイツやフランスなど米国外からも多くの反対意見が出された。日本からも,出版流通対策協議会,日本ビジュアル著作権協会,日本ペンクラブといった業界組織が和解案を拒否,異議申し立てなどを行った。
こうした世界規模の批判が高まったせいか,ついに米司法省も動いた。著作権や独禁法違反に関する懸念に考慮し和解案を見直すよう求める意見書を9月18日に裁判所に提出したのだ。当事者の作家団体Authors Guildと米国出版者協会(AAP)はこれを受けて審理の延長を裁判所に申請,これにGoogleも同意した。地裁はもはや見直しが避けられない状況と判断し,要請を承諾した。公聴会が予定されていた7日には裁判所に関係者を集めて今後の審理の進め方について協議するよう指示した(表)。
2004年10月 | 前身となる「Google Print」を発表 |
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2004年12月 | 米英学術機関と蔵書デジタル化で協力 |
2005年9月 | 作家団体Authors GuildがGoogleを提訴 |
2005年10月 | 米国出版者協会(AAP)がGoogleを提訴 |
2005年11月 | 著作権問われない書籍を全文検索・閲覧可能に |
2005年11月 | 「Google Book Search」に改称 |
2008年10月 | Authors Guildおよび米国出版者協会(AAP)と和解合意 |
2009年6月 | 米作家協会会長が和解を支持 |
2009年8月 | 米MS,米Amazon,米Yahoo!など,反対団体を組織 |
2009年9月 | 米国5州の司法長官,和解案に反対を表明 |
2009年9月 | 米司法省,和解案の見直しを求める意見書 |
2009年9月 | Authors Guildと米国出版者協会(AAP),審理の延期を申請 |
2009年9月 | 連邦地裁が審理の延期を正式に決定,和解案見直しへ |
連邦地裁は延期決定の中で「この問題は単に異議の数が多いということだけにはとどまらない。国や州,非営利団体,著名作家,法学者などと多方面から意見が寄せられており懸念が広がっている」と指摘。その一方で司法省と同じ見解を示し,「もし適切な見直しがなされれば,和解は社会にとって大きなメリットをもたらす」と付け加えた。
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