米Googleは米国時間2008年10月28日,同社の書籍本文検索プロジェクト「Google Book Search」(旧称:Google Print Library Project)を巡って対立していた出版業界との和解を発表した。複数の作家と作家団体Authors Guildによる集団訴訟と,米国出版者協会(AAP:Association of American Publishers)加盟社を代表して大手出版社5社が起こした訴訟について,総額1億2500万ドルを支払うことで和解合意に達した。

 Google Book Searchは,世界の大規模図書館の蔵書をスキャンしてデジタル化し,インターネットで全文検索ができるデータベースを作成するというもの。ハーバード大学,スタンフォード大学,オックスフォード大学のほか,米国の12大学で構成するコンソーシアム「Committee on Institutional Cooperation(CIC)」などが参加している (関連記事:米Google,米英学術機関と蔵書のデジタル化で協力Googleの書籍検索構想に米12大学が新規参加)。

 Authors GuildやAAP加盟出版社などは,許可なく書籍をデジタル化し配布する同プロジェクトは著作権侵害に当たるとして,2005年にGoogleを提訴していた(関連記事:米出版業界団体,米Googleの書籍本文検索プロジェクトの著作権侵害を巡り提訴)。

 Googleは,今回の合意は作家の著作権と利益を認めるものだと説明。作家が自身の知的財産に対するオンライン・アクセスを管理し,その報酬を受け取るための効率的な手段を提供するとしている。「Google Book Searchを通じて書籍へのオンライン・アクセスが拡大し,読者や研究者が恩恵を受けるだけでなく,作家や出版社もデジタル形式で作品を配信する機会が増える」(Google)。

 和解が成立した場合,米国でオンライン検索してプレビューできる著作権付きの希少本や絶版本のタイトル数が大幅に拡大する。読者はこれらを購入することも可能になる。

 また,苦情を申し立てている作家や出版社との問題解決のために「Book Rights Registry」を構築する。著作権を保持している作品がデジタル化された作家は同レジストリに登録し,報酬を受け取ることができる。

 なお,和解が成立するには,裁判所の承認を得る必要がある。

[発表資料へ]