次期クライアントOS「Windows 7」の完成予定日まで1週間となった米Microsoftは,Windows 7の開発作業の直接指揮してきたSteven Sinofsky氏をWindows担当社長に昇格させた。これまで同氏はBill Veghte氏とともにWindows担当上級副社長を務めていた。Veghte氏の運命は定かでない。同社からは,「Veghte氏は2009年後半に『新たな指導的立場』に就く」という情報しか出ていない(関連記事:Microsoft,Windows 7のRTMを目前にWindows部門の新トップを任命)。

 同社CEOのSteve Ballmer氏は,「Steven Sinofsky氏は,優れた製品を生み出す大きなチームに対して統率力を発揮してくれた。彼とチームが担当してきたWindows 7の出荷を目指す作業から,世界レベルのソフトウエアをどのように開発/リリースすればよいかが分かる。Windows部門のトップに最適な人物だ」と評価した。

Windows 7で見せた開発マネジメント力を評価

 MicrosoftがSinofsky氏のWindows 7という手柄を歓迎するのは当たり前だ。そのうえ同社は,Sinofsky氏のとっている米Appleもどきのやや秘密主義なマネジメント・スタイルも暗に認めている。

 同氏はWindows 7の開発を進める際,これまでのWindowsと異なる方法を選んだ。最終段階のぎりぎりまで情報を公開しなかったし,試用版をテスターに配布する回数を絞り込んで,製品開発の終わり間際だけに限った。かつて「Windows Vista」で多くのユーザーを「実装された機能が事前の約束より少ない」と失望させたような事態も,この開発プロセスなら避けられると,同社は確信している。ただしこのやり方には,これまでと違ってテスターの意見が製品設計にあまり反映されない,という面もある(関連記事:[PDC 2008]Windows 7のポイントは見た目改善/高速化/煩わしさ減少)。

 そうは言っても,Windows 7の品質とリリース・タイミングは間違いなく素晴らしい。正式リリース前のバージョンであるにもかかわらず,Windows 7は大量のよい評価を得た。多くの人が,予定している発売日より何カ月も早く一般向け提供を十分開始できるレベルにあると感じている。Microsoftは以前,2009年7月に完成させて10月終わりに発売すると発表していた(関連記事:Windows 7の発売日が決定,だが価格やライセンス体系は不明のまま)。

 Sinofsky氏はWindows 7を担当するまで,「Office」チームを何世代か率いた(関連記事:Windows開発体制の再編は,問題を把握できていないことの証し)。そして「Office 2007」で一新された,革新的ユーザー・インタフェース「リボン」の直接的な責任者である。そして,これからはWindows部門の担当社長として,Windowsだけでなく「Windows Live」「Internet Explorer(IE)」といった同社の主要製品をいくつも手がけるのだ。