近年、出会い系サイトを介した若年犯罪や、いわゆる「学校裏サイト」に問題が大きく取り沙汰されている。その影響から、総務省がキャリア各社に対し、未成年に携帯サイトのフィルタリングを自動適用するよう要請するなど、近年人気を集めてきた携帯サイトの利用が大幅に制限されようとしている。

 だが、若者の携帯サイト、特にコミュニケーションサービスの利用は、彼らがインターネットの世界を学び、リテラシーを向上する重要な機会となっている側面もある。最近では「ケータイ小説」のように、そうしたコミュニケーションから新しい文化が生まれる契機にもつながっている。

 しかしながら、こうした若者の携帯サイト利用におけるポジティブな側面が、正しい形でメディアに取り上げられる機会はほとんどなかった。そのため多くの「親」は、普段自らが触れることのない携帯サイトのネガティブな報道のみに触れ、不安を増長させているように感じてならない。

 本特集は、親世代の多くが普段触れることのない、携帯サイトにおける若者達の「日常の姿」を知ってもらうことを主旨とする。携帯サイトの悪い部分だけでなく、良い部分についてもよく理解し、フィルタリングをはじめとした「子供とケータイの付き合い方」について、改めて考えてもらうことができれば幸いだ。

(文/佐野 正弘)

【第1章】携帯フィルタリングが浮き彫りにした「親」と「子」のギャップ 
【第2章】ケータイ・コミュニティから見る、ケータイ世代の日常 
【第3章】バーチャルが生む世代間コミュニケーション 
【第4章】地方の若者を救うケータイ 
【第5章】ケータイ・コミュニティが生み出す文化 

佐野 正弘(さの まさひろ)
 ゲームやWeb、携帯コンテンツなどのデジタル・コンテンツを開発するエンジニアを経て、現在ではモバイル・携帯電話に関する執筆を中心に活動している。著書に「大人が知らない携帯サイトの世界 ~PCとは全く違うもう1つのネット文化~」(毎日コミュニケーションズ)、日経トレンディネットでおなじみ島徹氏らとの共著「Advanced/W-ZERO3 [es]入門ガイド」(翔泳社)など。