なぜ、未成年へのケータイフィルタリングが原則適用となったのか?

 2007年12月10日、携帯電話のインターネットの世界を揺るがすような発表が行われた。総務省による、携帯電話・PHSキャリア4社に対する「青少年が使用する携帯電話・PHSにおける有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の導入促進に関する携帯電話事業者等への要請」だ。これにより、有害サイトへのアクセスを制限するフィルタリングサービスが、未成年者に対して原則適用されるようになった。

 携帯電話・PHS事業者各社はこの方針に従い、現在提供されているフィルタリングサービスを自動適用することを相次いで発表。2008年1~2月から20歳未満の人が携帯電話を契約する際、親権者が「不要」と申告しない限り、フィルタリングサービスが自動的に適用されるようになった。さらに2008年6月以降は、現在契約中の利用者を含む未成年者に対し、親権者の申告がない限りフィルタリングが自動的に導入されることとなる。

 これまでも総務省は、フィルタリングの導入に関して指導を行ってきている。だがなぜ今回、未成年のフィルタリング原則適用という強い要請に踏み切ったのだろうか? 先の総務省発表における「要請の背景」から確認してみよう。

  携帯電話・PHS事業者各社は、昨年11月の総務省からのフィルタリングサービス普及促進の要請を受けて、契約時にフィルタリングサービスの利用に関する親権者の意思を確実に確認するなどの措置がとられており、社団法人電気通信事業者協会の発表によると、この1年間でフィルタリングサービスの利用者は約3.3倍(約150万増)となるなど一定の成果が上がっています。しかし、インターネットにおいては、特に青少年が出会い系サイト等に携帯電話を通じてアクセスし、事件に巻き込まれるケースが依然として多発しています。このため、本日、総務大臣から携帯電話・PHS事業者等に対し、青少年を有害情報から守るために、フィルタリングサービスの導入促進に向けた取組を、健全なコンテンツビジネスの展開の妨げとならないよう配慮しつつ、強化するよう要請しました。

(総務省・青少年が使用する携帯電話・PHSにおける有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の導入促進に関する携帯電話事業者等への要請」内、「要請の背景」より)

 これを見ると、今回の措置の理由として第一に挙げられるのは「携帯サイトを利用した犯罪の増加」である。確かに出会い系サイトで若年者が犯罪に巻き込まれる事例は増加しており、警視庁発表の「平成19年中のいわゆる出会い系サイトに関係した事件の検挙状況について」によると、被害者の96.8%が携帯電話から利用しているものだという。また昨年は、いわゆる「学校裏サイト」に関する問題が多く取り上げられ、大きな反響を呼んだのも記憶に新しい。

 第二に、フィルタリングサービスに対する認知が大きく向上していないということが挙げられるようだ。実は、総務省がキャリアに対し、フィルタリングサービスに関する要請を行ったのは、今回で2回目である。前回要請を行った2006年11月と比べ認知が高まってきているとはいえ、それでもまだ認知が低いとの判断から、さらに踏み込んだ要請を行ってきたといえる。

出会い系サイトに関係した事件の検挙件
出会い系サイトに関係した事件の検挙件
(警視庁「平成19年中のいわゆる出会い系サイトに関係した事件の検挙状況について」より)
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