写真1●東軟集団のリュウ・イェン副総裁
写真1●東軟集団のリュウ・イェン副総裁
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 「2009年初めには、技術者数を現在の1万3000人から2万人まで増やしたい」。中国のSI専業最大手、東軟集団(NEUSOFT)のリュウ・イェン副総裁は、こう宣言する(写真1)。年率50%ペースで人員増を続ける計算だ。

 1991年設立の同社は、アルパインや東芝といった日本企業が出資しており、日立製作所など40社程度の顧客を日本で持つ。中国でも銀行最大手の中国工商銀行などのシステム構築を手掛けている。日本向けと中国向けの事業費率はほぼ半々。日本向けの案件のうち、組み込み開発と業務アプリケーションの開発が、やはり半分ずつである。

 中国のSIベンダーで、1万人を超えているのは「東軟だけ」(リュウ副総裁)。2万人超えとなれば、中国初の快挙だ。一方で、グローバルで10万人を超えるインド・ベンダーとは、大差がついている。だが、リュウ副総裁は、「日本向けの仕事では、インド・ベンダーを上回る実績と規模を誇っている」と強調する。「日本語や日本の文化が分かる技術者を多数抱えている」と続ける。

外資系の引き抜きにストックオプションで対抗

写真2●中国・大連にある東軟集団の開発、教育拠点
写真2●中国・大連にある東軟集団の開発、教育拠点
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 インド・ベンダーを追随すべく、年間50%増のペースで人材を獲得する東軟だが、果たして採用の勢いに人材の育成戦略は追いついているのか。リュウ副総裁は「東軟グループとして、大連などでIT系の大学や教育施設を運営しているのに加えて、社員の教育にも十分な費用と時間を割いている」と説明する(写真2)。

 同社の悩みは、「手厚い研修を受けさせてようやく1人前に育った入社4~5年目の若手技術者が、米国系ベンダーなどに転職してしまうケースが多いこと」(リュウ副総裁)である。世界を舞台に活躍する機会を用意できるかどうかという点では、どうしても米国ベンダーに競り負けてしまう。東軟は、株式のストックオプション制度などを用意して、幹部候補のつなぎ止めに躍起だ。

 「海外ベンダーは、中国を人材の刈り取り場と見ている。中国よりも低コストで技術者を採用できるメドがついたら、中国に見切りを付ける可能性だってある」とリュウ副総裁は指摘。「中国ベンダーの当社なら、中国や日本などアジアで活躍する機会が大きく、将来も明るい」と、国内ベンダーの優位性を強調する。


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