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写真1●みずほ情報総研の山本剛史グローバルデリバリー推進室長 [画像のクリックで拡大表示] |
委託先は、瀋陽に本社を構える中国最大手の東軟集団(NEUSOFT)。BKとCBの勘定系を手がけるみずほ情報総研が主体となって、保守の移管を進めている。
みずほ情報総研は現在、合計6500人の体制で勘定系の保守をこなしている。6500人の内訳は、自社の技術者1500人と国内ベンダー120社の技術者5000人である。この業務を少しずつ中国に発注していく考えだ。
みずほ情報総研の山本剛史 グローバルデリバリー推進室長は、「保守に追われる国内要員を新規案件にシフトしたい」と話す(写真1)。新規案件の投資意欲が旺盛なBKとCBのニーズに応えるには、国内要員だけでは限界があると判断した。
プロセス構築にインド人を活用
パートナーは、日本語で仕事を進めることを前提に中国ベンダーを選んだ。中国ベンダーの中でも東軟に決めたのは、「最大手であることや、日本向けの案件を手がけた実績が豊富であることを評価した」(山本室長)からだ。とはいえ、東軟はインドの大手ベンダーほどは、グローバル・ソーシングの受注経験がない。みずほ情報総研にもグローバル・ソーシングのノウハウはない。
そこで、みずほ情報総研は、インド・ベンダーのサティヤム・コンピュータ・サービスから、グローバル・ソーシングのプロセス構築のコンサルティングを受けることにした。2007年夏のことである。
サティヤムからは、発注範囲や役割分担の明確化はもちろん、仕事の成果を定量的にチェックする手段の確立や、問題発生時のエスカレーション・パス、トップ同士の会議体などに関して指摘を受けた。「増員を要求したら、いつまでに実行するかを契約で明確にするべき、といった具体的なアドバイスをもらえた」(山本室長)という。
業務プロセス、仕様書、責任の所在、契約など、日本のユーザー企業と日の丸ベンダーとの間では、曖昧なままになることが多い事柄を1つずつ明確にすることが、グローバル・ソーシングには求められるのだ。
現地の技術者を自分たちで育てる
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写真2●中国・大連にある東軟集団の開発拠点を視察する山本室長(後方左から2人目)と東軟の技術者たち [画像のクリックで拡大表示] |
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写真3●東軟集団の関鵬 金融事業部副総経理 [画像のクリックで拡大表示] |
現時点で、東軟のみずほ向けチームは50人程度。勘定系システムの規模からすれば、まだまだ小規模だ。山本室長は「東軟任せにするのではなく、自ら現地の技術者を育成しながら、発注量を少しずつ増やしていきたい」と話す。
例えば、中国・大連にある東軟の開発拠点に日本から技術者を派遣し、現地で勘定系システムの開発標準を教え込む。逆に、大連から中国人技術者を日本に呼び寄せ、日本の銀行業務などの研修を施す。山本室長自身も大連に出向いて、現地の視察や幹部とのコミュニケーションを欠かさない(写真2)。
東軟の関鵬 金融事業部 副総経理は、「みずほ情報総研との関係を深めていきたい」と意気込む(写真3)。みずほと東軟の共同プロジェクトは、始まったばかりだ。
<過去に掲載したグローバル・ソーシング関連特集>
●日本市場に切り込む中国ITベンダー(全5回)●オフショア最前線(全9回)
●ベトナムの底力(全13回)
●押し寄せるインドのITパワー(全10回)
●これがITのチャイナ・リスクだ(全7回)
●グローバル・ソーシングを語る(全4回)