写真1●ルネサス テクノロジの堀口和男 業務改革推進統括部IT戦略企画部部長
写真1●ルネサス テクノロジの堀口和男 業務改革推進統括部IT戦略企画部部長
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写真2●アクセンチュアのジャー・ジン システム構築・テクノロジー本部パートナー
写真2●アクセンチュアのジャー・ジン システム構築・テクノロジー本部パートナー
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 半導体大手のルネサス テクノロジは、国内で使う基幹系システムの開発・運用・保守と、海外拠点のシステム開発をアクセンチュアと契約。国内のシステムは、中国・大連にある同社の拠点に委託している。

 国内システムをアプリケーション単位でみると、大連に任せているのは全体の半分。それらのアプリケーションも委託のレベルはまちまちで、全体の1割だけを任せているものもあれば、7割近くを委託しているものもある。これらの判断は、ユーザー部門と相談して決めた。

 業務改革推進統括部 IT戦略企画部の堀口和男部長は「どのアプリケーションなら海外に任せられるかの見極めには、必ず利用部門を巻き込む」と断言する(写真1)。利用部門の満足度を保ちながら、グローバル・ソーシングのメリットを得るための工夫である。

 海外に委託するかどうか検討する際のポイントの1つは、委託先の拠点で取り扱うデータのセキュリティ・レベルだ。堀口部長は、「ルネサスの社内と同等の環境を確保し、LANもルネサスの社内ネットワークに直接つなることで、高いセキュリティ・レベルを維持している」と話す。

 アクセンチュアが大連に構えるチャイナデリバリーセンターのシステム構築・テクノロジー本部 パートナーであるジャー・ジン氏(写真2)は、「専用ルームの出入り口には警備員が24時間常駐しているほか、システムの情報を印刷して外部に持ち出したりできないように、専用ルームで印刷した紙には特殊な加工を施し、ひと目で見分けがつくようにしてある」と強調する。これだけセキュリティを徹底していても、「業務を委託できるかどうかを慎重に判断した」(堀口部長)。

 海外に委託するもう1つのポイントは、アプリケーションの開発規模だ。堀口部長は、「規模が大きなアプリケーションほど、任せる意味がある」と説明する。小規模なアプリケーションの場合、移管に伴う引き継ぎの手間や開発効率などを考えると、効果が少ないという。

利用部門の不安を取り除く

 ルネサスのIT部門は、グローバル・ソーシングを始める前に利用部門に相談したところ、「これからは中国人にシステム開発を直接頼まなければならないのか」と不安をぶつけられた。情報漏洩を心配する声もあった。そこで、「利用部門とのやり取りは、従来どおりIT部門などが担当する」と説明して、納得してもらった。

 ルネサスは国内のシステムの仕様書を日本語で書いているため、中国の拠点を選んだ。だが、海外系のシステムは英語が中心なので、アクセンチュアがインドのハイデラバードに構える拠点を利用している。



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