世界規模でM&A(企業の合併・買収)が頻発するなど、競争が激化する製薬業界。業界最大手の米ファイザーといえども安泰ではない。
同社のIT部門は、さらなる競争力の強化を目指し、グローバルでIT戦略を転換しているところだ。米国本社を中心に、発注先のベンダーを世界で集約・統合し始めたのである。
具体的には、インフラ管理とアプリケーションの開発・保守という2つの領域で、それぞれ発注先を共通化する。例えばアプリケーションの開発・保守では、米国、欧州、アジアの3地域で、それぞれプライマリとセカンダリのベンダーを1社ずつ、合計6社を選定する必要があるが、一部のベンダーには複数の地域をカバーしてもらうことで、最終的に4社に絞り込む。
狙いは、グローバルでのガバナンス強化とサービスレベルの統一である。4社には、ファイザーが独自に定めた開発・管理標準に従って仕事を進めてもらう。「単価や契約条件で4社からレートカードを引き出して競わせることにより、さらなるサービスレベルの向上を目指す」(同社日本法人の渡邉慎介 ビジネステクノロジー・ジャパン ポートフォリオ・オペレーションズ部長)。
IBMからサティヤムにリプレース
写真1●インド・ハイデラバードにあるサティヤム・コンピュータ・サービスの開発拠点 [画像のクリックで拡大表示] |
写真2●インド・バンガロールにあるインフォシス・テクノロジーズの開発拠点 [画像のクリックで拡大表示] |
ファイザーは4社の社名を公開していないが、インド・ベンダーでは、サティヤム・コンピュータ・サービス(写真1)と、インフォシス・テクノロジーズ(写真2)の2社が食い込んでいるとみられる。サティヤムがアジアを担当し、インフォシスは欧米を担う模様だ。
ベンダーの選定にあたっては、「担当エリアのカバー力と技術者の動員力、そして技術力などが決め手になった」(渡邉部長)。選定の過程では、日系ベンダーは候補にすら挙がらなかったようだ。
ファイザー日本法人は、システムの開発・保守を日本IBMにアウトソーシングしている。契約満了を迎えたアプリケーションから、段階的にサティヤムに切り替えていく。
欧米ベンダーの仕事をインド・ベンダーが奪う。そうしたケースが珍しくない時代を迎えている。
■本特集に関連して、日経コンピュータ3月1日号に特集「IT鎖国の終焉 グローバル・ソーシングの幕開け」を掲載しています。ぜひ併せてお読みください。
<過去に掲載したグローバル・ソーシング関連特集>
●日本市場に切り込む中国ITベンダー(全5回)●オフショア最前線(全9回)
●ベトナムの底力(全13回)
●押し寄せるインドのITパワー(全10回)
●これがITのチャイナ・リスクだ(全7回)
●グローバル・ソーシングを語る(全4回)