写真1●野村ホールディングスの中村昭彦常務執行役IT統括責任者(CIO)
写真1●野村ホールディングスの中村昭彦常務執行役IT統括責任者(CIO)
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 証券最大手の野村証券も、インド・ベンダーの活用を始めている。持株会社、野村ホールディングスのCIO(最高情報責任者)を担う中村昭彦 常務執行役 IT統括責任者(写真1)は、「コストや技術者の動員力に加えて、グローバル標準のサービスを世界中で提供してもらえるのが魅力」と説明する。

 野村証券が委託しているのは、国内のほか米国、英国、アジアなど世界中の拠点でデスクトップ環境を統一する作業。「世界のどこでも同じソフトウエアを使える環境の整備が狙いだ」(中村CIO)。発注先はインフォシス・テクノロジーズである。

 中村CIOは、「発注規模は現時点では、それほど大きくない」と控えめに話す。ただし、同社のインド・ベンダー活用策は、これがすべてではない。「新たな戦略を検討しているところだ」と明かす。

「まずは自分たちが変わるべき」

 例えば、野村証券がグローバルで維持しているトレーディング・システムのインフラ。現在は日本と海外法人のIT部門が協力しながら、自前で構築、維持している。ここに、インド・ベンダーの力を活かせないかと考えている。

 中村CIOはインド・ベンダーを使いこなす前提として、「まずは自分たちIT部門が変わらなければならない」と覚悟する。発注者と受注者の役割が不明確、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)などの契約内容が不明瞭、仕様書の記述があいまい、といった現状のままでは、インド・ベンダーを使いこなせないと考えているのだ。

写真2●インフォシス・テクノロジーズのベンカタラマン・スリラム氏
写真2●インフォシス・テクノロジーズのベンカタラマン・スリラム氏
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 中村CIOは「双方の思考プロセスに大きな違いがある」(同)ことも痛感している。受注側のインフォシスは、日本とインドの違いについて、どのようにとらえているのか。同社シニア・バイスプレジデントで、日本拠点のヘッドを務めるベンカタラマン・スリラム氏(写真2)は、「例えば、日本企業のIT部門はベンダーに対して、何度も異なる提案を求めてくる。その後、議論を重ねてから決断をするため、意思決定に時間がかかる」と分析する。

 日本に滞在して12年になるスリラム氏は、「こうした違いを批判しているわけではない」と、流暢な日本語で強調する。「日本のビジネスの進め方に合わせて、業務プロセスを改善する努力を続けている」と続ける。

 一方で、「日本企業にも、変わろうと努力する姿勢が必要ではないか」と訴える。「今までの仕事の進め方に固執したままで、インド・ベンダーに仕事を任せられるかどうかを考えるのでなく、インド・ベンダーの力をどう活かせるか考えてもらいたい」と、発想の転換を促す。


■本特集に関連して、日経コンピュータ3月1日号に特集「IT鎖国の終焉 グローバル・ソーシングの幕開け」を掲載しています。ぜひ併せてお読みください。


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