最適なITリソースや人的リソースを、国境を越えて最適な場所からダイナミックに調達する「グローバル・ソーシング」に取り組むユーザー企業が増えている()。海外拠点のガバナンス強化、機動的な技術者の調達、先進的なパッケージ導入ノウハウの獲得、などが狙いだ。いずれも、国内のリソースしか持たない“日の丸ベンダー”には応えられないニーズである。

表●ユーザー企業各社のグローバル・ソーシングの取り組み
(出典:日経コンピュータ2008年3月1日号69ページ)
表●ユーザー企業各社のグローバル・ソーシングの取り組み
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 このような取り組みを推進しているのは、グローバル・ソーシングで先行する欧米企業と市場でぶつかる、日系のグローバル企業だけではない。流通、保険、銀行など国内市場中心の企業にまで広がっている。

 グローバル・ソーシングの対象業務は、システム開発にとどまらず、要件定義から保守・運用まで拡大。リソースの調達先もインド、中国だけでなく、南アフリカやフィリピン、シンガポールまで広がっている。コスト削減だけを目的に、プロジェクト単位で中国やインドのベンダーに実装工程を任せる「オフショア開発」とは、明らかに異なる動きである。

 企業がITで競争力を高めるためには、IT部門の目利き力が不可欠だ。今までの付き合いの延長で“日の丸ベンダー”にこだわるのでなく、新しい視点でグローバル・ソーシングに挑む行動力が求められている。

 そこで、今日から4週間にわたる本特集では、ユーザー企業のCIO(最高情報責任者)やシステム部門長への国内取材と、中国、インド、南アフリカ、フィリピンでの現地取材に基づき、グローバル・ソーシングに取り組むユーザー企業17社の決断に迫る(目次ページはこちら)。

 次回からはまず、東芝、日産自動車、野村証券など7社による、インド・ベンダーを活用した新システムの開発戦略やリソースの確保策について取り上げる。続いて、アフラック日本社、オムロン、みずほグループなど5社にフォーカスし、システムの保守業務を日本から中国に移管した取り組みなどを紹介する。最後に、中国やインドなどで自ら技術者の調達に乗り出すソニー、ヤマハ発動機など5社の奮闘ぶりに迫る。

■本特集に関連して、日経コンピュータ3月1日号に特集「IT鎖国の終焉 グローバル・ソーシングの幕開け」を掲載しています。ぜひ併せてお読みください。



<過去に掲載したグローバル・ソーシング関連特集>

オフショア最前線(全9回)

ベトナムの底力(全13回)

押し寄せるインドのITパワー(全10回)

これがITのチャイナ・リスクだ(全7回)

グローバル・ソーシングを語る(全4回)